仮の彼氏。(今吉翔一)

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貴方「別れた」

昼休み、いつもならチャイムが鳴ると早々に教室を出て行っていた私が

いつまで経っても出掛けないのを見て、

というか、机の上にお弁当を広げ始める私を見て、

友人が聞いて来た。

今吉君は？と。

だから、別れたと言った。

何でも無い事のように。


別れてみて思った。

やっぱり私、今吉君の事、好きじゃなかったんだなって。

彼といると胸が苦しくなったり、ふわふわとした高揚感に包まれたり、

今まで感じた事の無いような感覚を味わって、

それは彼の事が好きだからなのかもしれないと思ったりして、

でも私だけが彼を好きになるなんて嫌で、

だって今吉君は私を本当に好きなわけじゃないし。

だから違う違うって否定して、

今吉君にも、自分にも気付かれないように

“好きなのかも”の思いは、心の憶測に閉まっておいていた。

だけど、

そんなもの、必死に隠さなくても良かった。

そんなものは元から無かったんだから。

私が好きかもなんて勘違いしたその気持は、

ただ恋人という空気に酔ってドキドキしていただけのものだった。

だって

別れたのに何も感じない。

悲しくならない。

それって好きじゃなかったって証拠。


そして今吉君も、

あんなにあっさり別れようと言ったのだから

私の事なんて好きじゃなかったんだろう。


付き合うとき彼は、」

私に触れる時は、私を愛おしむとき。とか、

あんな甘ったるい言葉を言っておきながら、

やっぱり私の事なんか…

…あぁ、でも、思い返してみれば、

別れる少し前から、

私、今吉君に全然触れられてなかった。

そういえばキスも、いつからしていないんだろう。

そうか、

彼は突然、思いついたように別れようと言ったけど、

本当はもっと前から、

きっと噂が納まったら別れるつもりで、

そうか、

ずっと別れのタイミングを見計らっていたのかもしれない。

きっとそう。





友人「ねぇ、別れたんならさ、私、今吉君に告ってもいいよね。」

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