百六話 ページ9
-main side-
私が立つのは仮眠室の前。
礼儀としてノックをした。
すると、
ス「________クラウス?‥いや、違うか」
「わ、私。Aだよ」
ス「‥どうしたんだい」
扉越しに話をする。
ノックだけで起こしてしまったようだが、逆に好都合だ。
「話があるの。色々と‥だから、入ってもいい?」
ス「‥‥」
「‥スティーブン‥?」
私はドアノブに手を掛けた。
途端に空気が変わった。
室内なのに私の吐く息は白くなり、
背筋に痺れが走る。
触れたドアノブは酷く冷たく、
私の手は指先が赤く悴んだ。
「‥入るね、スティーブン」
私は退くことなく戸を開けた。
明かりの消された部屋。
薄い光が正面の窓から差し込み、部屋一面の氷が煌めく。
奥の壁には座り込んで表情の見えない"彼"が氷床の始点にいた。
裸足で氷を踏みしめる。
指先、真っ赤かな。
「スティーブン、話、聞いてくれる?」
"彼"と残り数歩の距離を残して問いかけた。
ス「‥君は、本当に何なんだ」
私はその問いも、彼の表情の意図も、分かりきってたつもりだった。
つもりだったのだ。
だが、彼は今、"私"によって苦しめられている。
"私"は何より、それが一番分からなかった。
どうしたら、"私"で悩むことがないのかが。
ス「君は、僕に怒りを抱かないのか?あの惨事で、僕は君を‥君を傷つけた」
「それは認めるよ。でも、あれはスティーブンの本心じゃない。あの人に操られていたから、起きてしまっただけなの」
ス「でも君の首元の包帯は取れないじゃないか。天使は治りが早いんだろう?
いつも、それを見ると僕は後悔して、心が締め付けられて‥平生を保てなくなる」
座り込んで俯く彼は顔を手で覆った。
大きな人なのに、いつしか小さな少年を見ているようだった。
失いたくない。
何を?
大切な者を。
守り抜きたい人を。
失いたくないから。
「‥ごめんね、スティーブン。辛い思いさせて」
いつしか、顔をあげていたスティーブンに謝った。
彼はさらに顔を濁らせた。
ス「‥ッ君は!
‥君は、いつもそうだ。もっと、僕に頼ってくれれば‥。
だって、苦しいのは________」
苦しいのは、君だろう?
40人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アンネ - 主ちゃんの心とかスティーブンさんの想いとかがとてもわかりやすくて面白かったです!これからも活動頑張ってください! (2019年3月9日 17時) (レス) id: 67a1c3a937 (このIDを非表示/違反報告)
鈴巴 - 主ちゃんが仲間と一緒にいて少しずつ、でも大きく成長していくのが読んでいてとても楽しかったです!これからも活動頑張って下さい!(^▽^)/ (2018年6月16日 22時) (レス) id: ad3d79f394 (このIDを非表示/違反報告)
ししょー(プロフ) - 心の雨と虹の空@現在低浮上ぎみさん» ご指摘ありがとうございます。大変失礼しました。 (2018年2月9日 21時) (レス) id: 23ac3f6a39 (このIDを非表示/違反報告)
心の雨と虹の空@現在低浮上ぎみ(プロフ) - オリジナルフラグ、外してください。 (2018年2月9日 20時) (レス) id: 469d2368ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ししょー | 作成日時:2018年2月9日 20時