デカい犬に頭から食われる経験はそうそう得られない 一 ページ26
神楽は寝巻き姿で押し入れの布団に寝転びながら、星海坊主からの手紙を読んでいた。
――拝啓、神楽ちゃん。元気にやってますか。
お父さんは毛根の方は死滅しましたが身体は元気です。
星海坊主はどこかの帝国の反乱軍に首を突っ込んで何やかんややっている旨を書いていた。
――P.S.一つ言い忘れてたことがあった。
神楽ちゃんが飼ってたあのデカい犬な……
「ぎゃあああ!!」
「!」
神楽が最後まで読み終わる前に新八の叫び声が聞こえた。
神楽は慌てて押し入れから出て新八の所に行く。
「新八どうしたネ!?」
「か、神楽ちゃん!! さ、定春が……!」
ソファーが押し散らされて荒れた部屋に、以前より巨大化した定春がいた。
「おーう帰ったぞー」
万事屋の扉が開いて、銀時とAが朝帰りしてきた。
「銀さんが帰ってきたよ〜っと。あー気持ちワル。Aちゃん居間までおぶって〜」
銀時は顔色が悪くふらふらで、Aは彼の腕と肩を支えていた。
しかし銀時はそんな彼女に後ろから抱きついてダル絡みする。一応本当に辛そうだが。
「ちょっ。もうちょっとだから、ちゃんと歩いてよー」
「A〜、いちご牛乳。いちご牛乳持ってきて。オエッ」
「そんな状態で甘いもの飲んだら絶対リバースするって」
「銀さん甘いものは無駄にしないから。いちご牛乳ないと死んじゃうから」
「糖分のお化けがアンタは」
この状況でも甘い物を欲する銀時にAは呆れていた。
「つーか、なんか妙に静かだな。あいつら起きてねーのか?」
先ほどから神楽の声も新八の声も聞こえず、銀時は不思議そうにする。
「確かに静かだね……とりあえずお風呂沸かしてアルコール抜かないと」
Aも疑問に思って、彼を支えながら廊下を歩き居間の襖を開けた。
『え?』
その先に、巨大化した定春が神楽と新八を食べているのが見えて、二人は間の抜けた声をこぼした。
「……なんだ、やっぱ飲みすぎたな。やたら定春がデカく見えるぞ」
「いや、銀ちゃん私にもそう見える」
「なんだ?Aも泥酔してんのか」
「私お酒飲まなかったって」
「まァいいや。オイ新八、そんなところに頭突っ込んでないでいちご牛乳もってこい。神楽は風呂だ」
「なに寝ぼけたこと言ってんすかァァ!この状況見ろォ!!」
「定春が……定春が一夜にして巨大化したネ!!」
新八と神楽がなんとか定春の顎を持ち上げ、定春に口を開けさせた。
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年10月2日 5時