好意の自覚 野兎の心 ページ18
星海坊主の送迎会が終わり、屋根の上でAは夜の静かな星空を眺めていた。
隣には神楽がいて、温かいお茶を飲んでいる。
「A……A本人はあの暴走を見れないから分からないと思うけど……アレは銀ちゃんにも新八にも、人間には止められないものアル」
神楽の言葉にAはうつむく。
「だから、私がAを止めるネ」
「え……」
Aは目を見開いた。
「私は夜兎だから、人間よりはAとやり合えると思うヨ」
「で、でもそんなことしたら私、神楽ちゃんを傷つけてしまうかも」
「そんなこと当たり前ネ。というか……きっと私でもあのAには苦戦するし、勝てないと思うヨ」
神楽は自分が傷つくこと前提で、暴走したAを止めると言い出した。
「じゃ、じゃあ何で……」
「私は、Aに人を殺してほしくないからアル」
神楽は真っ直ぐにAを見つめる。
「私はAに笑っていてほしいネ。泣いてほしくないネ。A自身が望まないことを、放っておきたくないネ。だから傷ついても死んでも、Aの体を傷つけることになっても――私はAを止める」
「神楽ちゃん……」
Aは目頭が熱くなり、気がつけば涙が溢れていた。
「神楽ちゃんは、私のことをそんなに、思ってくれてたんだ」
――神楽ちゃんにとってどうするのが正解なのか、私なんかが止めて良いのか分からなくて。
その場で足踏みしていた自分と神楽を比べて
「神楽ちゃんは何としてでも止めてくれるのに……私、バカみたい」
Aはポロポロと泣きながら、神楽を抱きしめた。
「えっ、Aっ……?」
神楽は抱き締められて驚き顔を少し赤くする。
ぎゅっと、抱きしめる力が強くなって神楽は無言の愛を感じた。
なんとも言えないむず痒さを感じて、神楽は口元を緩ませる。
Aは一度体を離して、神楽を見つめる。
「私は神楽ちゃんに笑っていてほしい。泣いてほしくない。傷ついてほしくない。だから暴走して神楽ちゃんを傷つけることがないように、私は自分を止めてみせるよ」
頰も鼻も目も赤く頼りない姿だったが、その瞳は真っ直ぐに神楽へ向いていた。
「……Aは本当に変な人アルな」
(私は本当に……このヒトが好きなんだ)
想いに胸を焼かれて。
「わっ」
神楽はフッと笑ってAに飛びついた。
「神楽ちゃ」
「A……大好き」
Aの肩で顔を隠しながら、神楽はギュッと彼女を抱き締めた。
人の恋路を邪魔する奴は星に代わってお仕置きよ 一→←星の暴走は止められない 三 終
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年10月2日 5時