検索窓
今日:96 hit、昨日:44 hit、合計:52,354 hit

星を想うロマンチストたちよ 三 ページ48

大きな破壊音が鳴り響き、森の木々が倒れていく。

「見た目に反してなかなか強者のようだな」

 鬼人、鬼獅子がAの蹴りを避ける。
 彼女の足は木に当たり、一瞬にして太い幹をへし折った。
 Aは距離を詰めて槍を掴み粉々に破壊し、鬼獅子の腹に拳を打ち当てる。
 彼は遠くまで吹っ飛び木にぶつかった。
 Aは起き上がった鬼獅子の顔に回し蹴りを喰らわせる。

――が

「だが甘いな」
「!」

 鬼獅子は平然と立っていて、Aの足を腕で払い除け、彼女の首を強く掴み上げる。

「ッ」
「どうやら貴様、死ぬ覚悟はできているようだが――殺す覚悟はできていないようだな」
「!」

 鬼獅子の言葉にAは目を見開いた。
 図星だったのである。

 Aは強敵と戦いこそすれ、死なせることなく留めていた。
 人を殺めたことなどなく、本気で生死をかけた戦闘はしてこなかった。
 そんな彼女は、相手を殺す攻撃をためらっていて。

「覚悟が並でないことは……その殺気立った獣の目を見ればわかる。だがしかし、惜しいな」
「ァ、ッ……」

 鬼獅子がグッと手に力を入れ、Aの首が締め上げられる。
 彼女は苦しそうに歯を食いしばり、口の端からヨダレをこぼした。

 Aは、自分の中で何かが叫んでいるのを感じた。
 胸の奥底で、自分は――命の殺し方を知っていると。

 Aの手に力が入り、指骨が浮き出る。
 自分の首を絞める鬼獅子の腕を右手で強く掴んだ。

「!」

 粉砕音が聞こえて、爪が立てられ鬼獅子の腕から血が流れる。
 Aの赤い目が、黒く濁り始めていた。


 道信は木に手を添えながら焦った様子で前に進む。

「!! Aさ……」

 Aと鬼獅子の元まで辿り着き、彼女が首を絞められているのを見て驚く。
 すぐさま彼女の元に駆けようとするが、体を怠惰感が襲いその場に倒れ込んだ。
 幸い、鬼獅子はこちらに気づいていない。

 道信は傷のせいで動けなくなったのか、と胸元を見た。
 しかし、胸の傷が一切なくなっていた。

「!」

 服は血で汚れているが、肉体に裂かれた穴はなく、気づけば痛みもない。

「どういう、ことだ」

 道信は困惑するが、それより今はAを何とかしなければと切り替える。
 傷がないなら好都合。早く彼女を助けにいかなければ、と立ちあがろうとするが

「体が、重い……!?」

 道信の体は何故か起き上がらなかった。
 何か巨大なものに押し組み伏せられているように。

星を想うロマンチストたちよ 四 ※流血注意→←星を想うロマンチストたちよ 二



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (62 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
154人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 逆ハー , 原作沿い   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年8月29日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。