鬼の前に降る流れ星 三 ページ43
「言っとくが、俺ァてめーらのために働くのは御免だぜ」
沖田が自分達を頼るつもりなのを察して、銀時はあらかじめ断る。
「アンタは俺と同種だと思ってやしたが。こういうモンは虫唾が走るほど嫌いなタチだと」
沖田はそう言って、リングで仁王立ちする鬼面の男の説明をした。
その男は煉獄関で最強の闘士、鬼道丸。
いかつい金棒を武器に、今まで何人もの挑戦者を潰してきている。
「まずは奴をさぐりゃァ何か出てくるかもしれませんぜ」
「オイ」
銀時は断ったのに話を進める沖田に青筋を立ててツッコむ。
「これは俺の個人的な頼みで真選組は関わっちゃいねー。だからAさんも、この事は近藤さんや土方さん、戦さんには内密に」
沖田は人差し指を口元に持っていき、ニッと笑った。
そんなこんなで神楽は依頼に乗り気じゃないものの、銀時たち四人は定員オーバーでも無理やり飛脚に運んでもらいながら鬼道丸を尾行していた。
彼を追って辿り着いたのは、古びた廃寺だった。
銀時たちは茂みに隠れていたが、寺から悲鳴が聞こえる。
『!』
「お前らはここで待ってろ」
「銀さん!!」
「銀ちゃん!」
悲鳴を聞いて銀時は茂みを飛び出し、サッと縁側のそばに屈んでゆっくり襖を開ける。
「!」
そこには子供が大勢いて、好きなようにはしゃぎ回っていた。
「こいつァどーいうことだ」
銀時が立ちあがろうとすると、
「どろぼォォォ!!」
後ろから男が銀時の尻に向かって思いっきりカンチョーした。
「申し訳ない。これはすまぬことを致した」
銀時と新八、Aは宅を囲んで、男が勘違いで銀時にカンチョーしたことを詫びた。
最初こそ新八たちは彼を廃寺の和尚だと思って、鬼面の男を見なかったかと尋ねていた。
しかし話の途中で男が鬼の面を被ってみせて銀時と新八は声を上げて驚く。
Aは彼が鬼道丸であると予想していたのか驚いていない。
「私が煉獄関の闘士、鬼道丸こと……道信と申します」
彼は鬼面を外し、名を名乗った。
道信と銀時は縁側に座り茶を飲んで話をした。
神楽とAは子供と遊んでいて、新八はメガネを盗られたりと子供に遊ばれている。
庭で遊ぶ大勢の幼い子供たちは、捨て子だったらしい。
道信は昔から腕っ節が強く、いつしか人斬りと呼ばれる輩にまでなっていた。
やがて獄に繋がれ死を待つのみだった彼は、その腕を見込んだ連中に買われ、今度は煉獄関に繋がれることとなったという。
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年8月29日 18時