困ったときは笑っとけ笑っとけ 二 ページ4
ふと新八が上を見上げると宇宙船が近づいてきていた。
「船だァ！救援だァァ！！」
「俺たち助かったんだァ！！」
乗客たちがワッと歓喜の声を上げ、新八も安心して息を吐いた。
「アッハッハッ！すまんの〜陸奥。こんな所まで迎えにきてもらって」
「ワシらの船は商いをするもんじゃきー。頭のアンタがこんなこっちゃ困るぜよ」
笑って陽気に謝る上司に陸奥は真顔で言った。
陸奥がフラフラするなと指摘すれば坂本は、地球の女しか受け付けないからと返して。
「女遊びもほどほどにせんと痛い目みるぜよ」
「女遊びちゅーても、地球で会いたい女はAしかおらんけーの」
「！ そうか、あれが……」
坂本がAへ目を移し、陸奥も彼女を見る。
陸奥はAの名前を聞いた瞬間、眉を寄せた。
「アンタが可愛い可愛いゆーちょったからどんなもんかと思うたが……確かにあれば美麗だな」
「ほーじゃろほーしゃろ！」
陸奥は普段から、上司の女への呟きを聞き続けている。
今回も女好きの坂本の言うことだからあまり関心はなかったが、Aに関しては彼と出会ってからずっと聞いていたため少し気になっていた。
Aは坂本が宇宙で船に乗る理由の一つである。
それを陸奥は知っているが、星人の資料を見て以来、Aへの警戒心も持っていて。
陸奥の表情が険しくなっていた。
「そげん怖い顔せんでもええき」
「おまんなァ……例え綺麗な女とは言え相手は宇宙で最強最悪の種族じゃ。ヘタしたら海援隊が壊滅させられるろ。それだけで済めばええが」
「アッハッハッ！心配せんでもええ」
坂本は一つ笑ってAを見る。
「あの子は、世界で一番優しい子じゃき」
愛しい相手を見る様に彼の瞳は少し熱を持っていた。
その優しさの裏に毒が潜んでいるかもしれないと言うのに、と陸奥は思いながらAを見やる。
彼女と目があって、Aはにっこりと微笑んだ。
「ッ！！」
陸奥は驚きで目を見開いて、彼女の笑みに自然と頬が熱くなる。
慌てて笠を目深に被り目線を下へさげた。
「のう、坂本」
「？ 何じゃ？」
「あの子のあの綺麗な容姿は昔からか？」
「んー、ワシより金時たちの方が出会いは早いが、Aは昔からあんな感じぜよ」
「そうか……」
陸奥は彼女の容姿を、星人が地球で人間に同化するために備えたものである可能性も考えていた。
「どちらにせよ危ないの」
ワシまで惚れてしまいそうじゃ、と陸奥は小さく呟いた。
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作者名：刹那＊桜 | 作成日時：2022年8月29日 18時
