中にはクーリングオフできなかったりする場合もあるから気をつけろ 六 ページ30
「あー。聞いてくれよ神楽ちゃん。僕パチンコで大勝ちしちゃって〜、この間木刀にカレーこぼして臭くてしゃーねェから新しいの買おうと思ってね〜」
銀時は自慢するようになんとも鬱陶しい顔をして神楽の肩を掴んだ。
「え？ 木刀ってこれ？」
神楽が驚いて、木刀を紹介しているテレビを指せば銀時が肯定して返した。
それを聞いた神楽は、両手に木刀を持ち、バキッと思いっきり折った。
「オイぃぃぃ！！ なんで折るの！？ なんで折るの！？」
「Aに小刀返してくるアルかー」
「無視すんなオイぃ！！」
銀時の叫びを尻目に神楽はAのいる部屋に向かった。
部屋の前までくると、少しためらいつつ襖を開ける。
「？ あ、神楽ちゃんおかえりっ」
振り返ったAがにっこり微笑んで、神楽は驚いていた。
「A、気付いてないアルか？」
「え？ ああ、小刀のこと？ 知ってるよ」
「え……なんで怒ってないアルか？ これ、Aの大事なものでしょ？」
神楽は戸惑ったように尋ねた。
それを聞いてAはクスッと笑う。
「まあ大事に使ってはいるけど、そんな大層なものじゃないよ。すぐに買えるし」
「え」
銀時みたいに代えのきくものらしく、神楽は呆然として。
しかし岩慶丸と戦った時のことを思い出し、小刀の柄の六芒星を見る。
「で、でもコレ変な紋章があるヨ！ それにさっき凄い力でたネ！」
「……それ、多分おまじないの効果だね」
Aは一瞬驚いた顔をするが笑って言った。
「お……おまじない？」
「うん。その刀は私の師匠が許可をくれて貰ったものなんだ。昔、神社に寄って柄におまじないをかけたの――大切な人を守れますように、って」
懐かしむようにして、昔のことを思い返した。
――
『A。武器は、大事なものを守るために使うんですよ』
昔、物事の判断をできるような年になったと見込まれて、Aは師匠である松陽から小刀を貰った。
どこでも買えるようなその小刀は、小刀と言っても凶器になり得る刃物である。
松陽は武器の危険性を伝えて、Aに安易に使わないようにと釘を刺した。
Aは彼から教えられた注意事項を胸に収め、しっかりと頷いた。
それからAは小刀を肌身離さず持っていた。
しかし、決して遊びで振り回したりすることはない。
松陽の言いつけ通り、小刀をひけらかし使うことは全くなかった。
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作者名：刹那＊桜 | 作成日時：2022年8月29日 18時
