中にはクーリングオフできなかったりする場合もあるから気をつけろ 三 ページ27
「積星雷神の柄には龍が描いてある。この小刀は見た目こそそっくりだが、柄に描いてあるのは龍じゃない」
ほれ、と男がルーペと小刀を渡し、神楽がルーペでその柄を見る。
何か紋章が刻まれているが、それは龍ではなく、六芒星だった。
「これは積星雷塵の紛い物とも言えるが、もしかしたらまだ発見されていないだけで派生の部類かもしれん。そんな知識上にないものは買い取れないのさ」
男は肩をすくめてルーペを片づけ、もう一度小刀へ目を向ける。
「にしても……この小刀、手入れや刀研ぎがしっかりされてて錆も欠けも、柄に汚れすらねェ。相当大事に扱われてるな」
「!」
男の言葉に神楽は反応して、少し胸を締め付けられる感覚に襲われた。
「これの持ち主、ホントにお嬢ちゃんなのか?」
「……」
神楽が無言で返せば、男は眉を下げて小さく息を吐く。
「悪い事は言わねェ、早く持ち主に返した方がいい。窃盗なら相当な恨みを買うだろう。仮に相手が怒らなかったとしてもこんなに大事にしてんだ、可哀想になってくる」
「……帰るネ」
神楽はバッと男から小刀を奪って逃げるように走って店を出た。
「ふんごおおお!!Aのは何かもうよく分かんないし、銀ちゃんの木刀は何で誰も買ってくれないアルか! カレー臭いって何ネ! アイツ大事な木刀にカレーこぼしたアルか!?」
神楽は橋に洞爺湖を叩きつけて八つ当たりしていた。
神楽の力のせいか、はたまた洞爺湖の性能か、橋は見事に粉砕されて付近の足場が川に落ちる。
近くにいた人たちは悲鳴をあげて慌てて逃げていた。
神楽は割れた橋に座り酢昆布を咥えて、その横で定春は寝転がっていた。
「もう帰るに帰れないヨ」
神楽はAの小刀を見て、先ほどのことを思い出す。
――この小刀、手入れや刀研ぎがしっかりされてて錆も欠けも、柄に汚れすらねェ。相当大事に扱われてるな。
神楽は苦悶を顔に浮かべる。
「二人が大事にしてたモノ、勝手に持ち出してしまったネ。きっと怒ってるヨ」
神楽が悩みにふけていると、前方から男が飛んできて
薙刀を勢いよく振り下ろしてきた。
神楽は手元に持っていたAの小刀でとっさに受け止める。
先ほど大事にされていると知ったばかりに、それを使うのに罪悪感と
「何アルかお前」
「! 木刀に目をつけたが、小娘その小刀どこで手に入れた」
攻撃してきた男はその小刀を見て驚いた。
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年8月29日 18時