屋台で買って食べ歩きするなら人混みの中は気をつけろ 五 ページ17
幕府が三郎を処したことを、知らなかったでは済まされないと、叱責するとでも思っているのだろうか。
『何怖がってんだ。怒鳴りゃしねーよ』
『でも……』
『お前は知らなかったんだろう。知らねーものを、もう終わったものを対処しろなんて理不尽な事は言わねェよ』
Aは申し訳なさそうに俺の話を聞いていた。
『三郎がなァ、一度だけ手紙をよこしたんだよ』
『えっ……』
『「良い人と出会えた」ってよ。喧嘩して家出てったくせに、文の言葉は嬉しそうでな』
つられてこっちも笑顔になっちまうぐらい、楽しそうに書かれたものだってことが伝わってくる。
そんな文だった。
ーーその子に俺の機械人形を渡した。すぐに戦場から離れて静かに暮らせと、もし生活に困ったら俺の親父を訪ねろと言っておいた。
『「その子が来たら、よくしてやってほしい――Aっていう、綺麗で優しい、大事な人だ」ってな』
『ッ……』
文の内容を聞かせてやれば、彼女はまた涙で顔をぐしゃぐしゃにした。
『息子がこんなこと言う相手だ。そんで、そんな息子が渡した
Aは
それから彼女と色んな話をした。
三郎と仲良かったこともあって多少は機械の知識も頭にあるようで。
俺の作ったものを紹介したりもした。
『源外さん！ また来て良いですかっ？』
帰る時間になって、Aは元気にそう尋ねてきた。
『別に良いが……何もないぞココ。それにお前仕事は』
『フフンッ、仕事できるマンだからパパッと終わらせて時間作ってここ来るね！ じゃあ、またね！』
Aはガキみたいに胸を張って言い、背を向けて歩いていった。
その背をみてると離れていくのが何だか無性に怖くなって、三郎を思い出して一人不安に飲まれる。
『フン、今日会ったばかりのガキじゃねーか。何考えてんだ俺は、縁起でもねー』
誰かに吐き捨てるように言葉を投げた。
『こんにちは源外さん！』
次の日の夕方、ソイツはニコニコと笑顔で俺の前に現れた。
呆気に取られていれば、彼女は不思議そうに首をかしげて。
『ホントに来るとは思わんだろ』
俺は大きくため息をついて頭をかいた。
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作者名：刹那＊桜 | 作成日時：2022年8月29日 18時
