泥だらけの手でも離さない 七 終 ページ50
星人の高い戦闘能力が「殺傷」へ使われるようになることは、危険な領域に入ることと同義だった。
今までAがその力を殺傷へ使わず抑え込んでいたからこそ見えなかった事
星人の脅威的な力を持った、殺人兵器となる可能性が生まれてしまったのである
Aから放たれる殺気と闘気は、殺意を向けられていない沖田でも畏怖するものだった。
(Aさんの顔つきが二年前とは全く違う……人を殺す人間の目だ)
二年前のあの涙を流した彼女よりは汚れて見えるかもしれない。
(殺すことを恐れ剣を振れなかったあの人はもういない)
変わってしまったといえばそれまでである。
(純粋なままで、変わってほしくはなかった。だが……)
浪人たちを斬り血と汗に濡れるAの瞳に沖田はフッと笑った。
「アンタはそれでも、眩しすぎるんでさァ」
たとえ血で汚れようと泥にまみれた手であろうと、Aの目はしっかりと前を見て目的を見失わず輝いている。
「ッ!」
Aは背後の敵に気付くのが遅れ、彼女へ刃が振るわれる。
(アンタが殺人鬼にならない保証はできねェ。だが)
「たとえ泥だらけで汚れた手になろーが、アンタの手は離しやしねェ」
ズバァと沖田がAを襲っていた敵を斬り殺した。
「惚れた弱みってのは厄介なモンですねィ」
お互いに血を浴びながらも沖田は優しい笑みを浮かべてAの手を取り抱き寄せた。
「!お、沖田君」
Aは抱き寄せられ驚いて顔を赤くする。
「にしても、こいつァちょっとヤベーか」
「……斬っても斬っても数が減らないね」
「むしろ、俺にゃ増えてきたようにすら見えてきやがった。へへ、いよいよ疲労で視覚もおかしくなってきやがっ……」
沖田は言葉を止め、前方を見て少し驚く。
そしてすぐに冷めた表情になり刀を下げた。
横でAは前を見て苦笑いした。
「!戦闘態勢を解いたわ!」
二人の様子を見て蒼達が嬉々として叫ぶ。
「ついに諦めたようね!チャンスだわ!総員!斬りかかりなさい!!」
蒼達が命令を出すが、シンと静まり返って彼は後ろを振り返る。
「スイマセン。メンドくさいから嫌です」
「隊長ォォ!無事ですかァ!!」
蒼達の後ろには浪人に変装した銀時と新八、神山がいて
「次はどいつに斬りかかればいいんだ」
「始末者じゃ済まねーぞ総悟」
「丁度いいや。一番隊隊長の席狙ってたんだよなー」
青筋を浮かべた土方と、近藤と戦が私服姿で立っていた。
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年5月27日 2時