紫煙 九 終 ※イラストあり ページ33
すぐに高杉から距離を取ろうとした。
が、片腕を掴まれてバランスを崩し彼に押し倒される。
ザン、と顔の横に刀が突き立てられた。
「十年以上も溜め込んだ欲 情だ。覚悟して受け取れ」
高杉はAの服に手をかける。
しかし刀が横から飛んできて、すぐさま後ろに飛び退いた。
飛んできた刀は轟音を立てて壁に突き刺さり、コンクリートの壁を大破させる。
「汚ねえ手でAに触れてんじゃねえ」
落星は瞳孔の開いた赤い目で高杉を睨んだ。
「クク……やはりテメーもこいつに惚れてやがるのか。同族をも魅了するとはな」
「……お前たちがあの女に近づけているのは偽りに過ぎない。星人の匂いに寄せられた人工の好意だ」
「作られたもので結構だ。俺の中の芯がAを求めているのなら、それに抗う必要はねえ。俺が刃を向けるのは……テメーらの方だ」
高杉は笑って刀を握り、落星に切っ先を向けた。
「誰にもAを取られたくはねェ。誰にも泣かせたりはしねー。誰にも傷付けさせやしねえ……」
「俺の大事な女に手ェ出したんだ……その首掻っ斬ってやらァ」
口角を上げる高杉の緑の目は、愉悦に混ざって
明確な殺意と憎悪が見えていた。
落星はフッと笑う。
「お前の剣は俺には届かねえよ」
高杉が地を踏み込んで刀で彼に斬りかかる。
が、その間にAが割って入り、薙刀で攻撃を防いだ。
Aの薙刀に、紫の線が刻まれていく。
「ッ!」
紫のそれが強く光った瞬間、高杉は薙刀で強く押し払われ吹っ飛ばされた。
「がはっ!」
壁に背中を強打し、高杉は口から血を吐いて地面に倒れる。
「お前はAには勝てない」
落星はAの腰に手を回し、抱き寄せる。
「Aは……誰にも渡さねえ」
赤い月夜に、星人二人の赤い目が鋭く刃を研いだ。
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年2月26日 20時