紫煙 二 ページ26
「クク、余裕だァ?……そんなわけねェ。
高杉の笑みは一瞬にしてなくなり、鋭く男を睨みつける。
「利用?違うな。俺たちは彼女を解放しただけだ。お前達と敵対し、己の力を制限なく発揮する。それが、本当のAだ」
男の発言に、高杉は眉を寄せる。
「アレが本来の姿だァ?てめーは何も解っちゃいねーな。たとえ力の全てを解放した結果がそれだとしても……そいつ自身が自分の気持ちで動いたものでなきゃ、そいつの本当の姿とは呼べねーんだよ」
男は高杉の発言に眉を寄せ、数日前のことを思い返した。
ーー
Aが行方をくらまして一週間が経った頃
人里離れた山の中の神社で、夜星たちはAを前に倒れていた。
彼女は刀を手に持っていて、赤い目は正気をなくし、ただそこに立っているというような様子だった。
神社の敷地には薄黄色の巨大な結界が張られている。
「はあ、はあ……」
夜星は体中から血を流し立ち上がった
星羅夢が番傘を地面に刺し、それに体重を乗せて支え立つ
「やっぱ、俺たち全員でかかってもソイツは倒せないアル」
「ゲホッ……星人が十人で袋叩きにしても殺せねーんだ。人間には絶対に無理だろう」
晩星が血を吐き眉を寄せて言えば、夜星はグッと拳に力を入れる
「……作戦を、決行する。AAを危険分子とみなし排除する。だが我々では手に負えない。江戸の者たちを揺すり刺激し、Aと衝突をさせ、体内のアルタナの自然消滅を狙う」
夜星が指示を出し、手を横に振れば結界が壊れてAが気絶して倒れる。
夜星は彼女の元に駆け寄って抱き支えた。
Aたち星人にとって、体内にあるアルタナは生命活動になくてはならない存在である。
アルタナにより力が増強され、他の種族と比べ物にならない戦力と生命力を持つ。
だからこそ、それがつきないように体内でアルタナを生成できるようになっていた。
体内のアルタナを回復する間もなく全て消耗させることができたなら
それはすなわち、星人を人間同等まで落とし込む弱体化ができるのである。
普通の星人ならそこまで苦労せずにできるのだが、Aの場合はアルタナが膨大すぎる
ただし無限というわけでもない。
アルタナを一気に外に放出する機会を作れば、たとえバケモノじみている彼女も殺すことができるのである。
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年2月26日 20時