好きな相手なら、笑わせてみせろ 三 ページ23
「ぐふっ!!」
敏木斎の攻撃を受け、銀時は竹藪の中を吹っ飛ばされる。
「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえってな。夫婦の誓いを立てた二人を邪魔するなんざ野暮ってもんだろ」
竹に掴まって言う敏木斎の言葉に、銀時は笑って口の端の血を拭う。
「夫婦だァ?笑わすな、ジジイ。おたくの坊ちゃん……坊ちゃんじゃなくて、お嬢さんだろ」
「……こいつァ驚いた。気づいとったか」
「さすがは天下の柳生流じゃねーか。女好きの娘のために総出で結婚相手を用意しようってわけか……だが」
九兵衛がAへ向ける視線を思い出して、銀時は言葉を続けた。
「おたくのお嬢さんが見ている相手、もう一人いないか」
敏木斎は銀時の問いかけに驚いて目を見開いた。
「……やはり人間、惚れた相手に向けられる好意にはすぐ気づくものか」
敏木斎は厠でのやりとりで銀時がAを慕っていると察していた。
「おいおいアンタ、気づいててこのまま放ってるのか?大事な娘の恋愛だぞ、いいのかよ」
「そこは九兵衛が決めること。アレが本心を隠していようと、お妙ちゃんを選ぶも『あの子』を選ぶも自由。わしらが口出しすることじゃないわい」
「……そうかよ」
銀時は少し呆れた様子でため息をついた。
――
「ふ……ふざけるな!」
新八が驚いた様子で声を上げた。
「女の身でありながら姉上と結婚!?そんな事が通ると思っているのか!姉上!!なんで今まで言わなかったんですか!?知った上で、九兵衛さんと……!?」
新八の言葉にお妙は何も言えず黙り込んでしまった。
ーー
「あんな風に育っちまったのは全部わしらのせいでな」
敏木斎は昔のことを思い返して話し出した。
柳生家は代々、男が家督を継ぐことになっている。
しかし輿矩の妻が九兵衛を生んですぐに亡くなってしまい、輿矩は新たな妻を設けることを受け入れなかった。
彼は妻に惚れていた上に、後妻を迎え入れれば亡き妻の忘れ形見である九兵衛は柳生家で立場を失い居場所をなくしてしまう。
そんな彼女のためにも敏木斎と輿矩は柳生家の一部の者を除いて、九兵衛が女であることを伏せて男として育てた。
九兵衛が柳生家で生きていくためにはそれしか道はないと思って。
二人とももちろん本当に男にしようとは思っていない。
しかし柳生家を継がせるためには名実ともに強さが必要である。
だから、彼女に彼として生きるよう厳しくしてきた。
好きな相手なら、笑わせてみせろ 四→←好きな相手なら、笑わせてみせろ 二
98人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
刹那*桜(プロフ) - アイナさん» あけましておめでとうございます!10個目でも見に来てくださって本当に嬉しいです。ありがとうございます! (2023年1月6日 4時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
アイナ(プロフ) - あけましておめでとうございます。そしてシリーズ数二桁突入おめでとうございます。今年もぜひ、夢主ちゃんとお兄様の活躍と銀魂キャラたちの奮闘を拝見させてください! (2023年1月2日 10時) (レス) id: 503469204d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年1月1日 3時