第245話 狡い人 ページ7
クリスside
沢村のカットボールの一件から程過ぎた後。
陽良「ゲ、もうこんな時間か。」
クリス「何か予定でも?」
陽良「予定っつーか、何て言ったら適切なんだろうか……。
一応、人と会う予定ではあるけど、」
この人が言葉を濁すという事は、その人物はアキさんにとって相当厄介な人なんだろう。
眉間に皺も寄ってる。
相当会いたく無いのだろう。
陽良「それより、クリス。肩の調子は順調か?」
クリス「はい。今年中には選手復帰出来るほどには、」
陽良「そうか。来年が楽しみだな。」
グラウンドを見つめ、何処か静観しているよう。
去年のチームの柱の一人。
今は、六大学野球界の期待のルーキー。
クリス「アキさんは、何処までを目指しているんですか?」
陽良「プロ、て事か?」
クリス「そこも含めて、です。」
陽良「………。
誰にも言うんじゃねぇぞ。
“俺にとって”の野球は、終わったんだ。
もう、随分前にな。
俺は、多分、兄さんみたくなれない。」
思わぬ回答に一瞬戸惑いを覚えた。
寂しげな横顔に、畏怖とも憎悪とも言えぬ何かが映っていた。
__それよりも、“何処で”?
陽良「クリス、」
……何時もの、眼差しだ。
心を掴んで離してくれやしない。
けど、柔らかく温かい。
陽良「……お前、気づいてんだろ?」
ドッ
クリス「な、にを、」
陽良「薄々勘づいてるだろ。
___“アイツ”に違和感ある事、」
心臓に変な動機が生じる。
冷や汗が流れる。
冷ややかな視線。
まるで、喉元にナイフでも当てられてるような感覚。
「……ま、別にお前は“全部”知ってる、てわけじゃないだろ。
知ってるからって、どうこう言うつもり一切ねぇから。」
一瞬で、“何時も”のアキさんに戻る。
ふっと、体から力が抜ける。
陽良「なあ、クリス。」
………?
陽良「コレは、“先輩”としてじゃない。
“__”として、お前に頼みがある。」
……狡いな、この人は、
どんなときでも。
陽良「______…」
滅多に人を頼らない。
むしろ、信じられないぐらい、色々背負ってるくせに、
『貴方の頼み事、誰が断れるんですか?』
クリス「分かりましたよ。」
本当に、狡い人だ。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き楽しみにしています! (2020年3月26日 11時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
しろうさぎ(プロフ) - ありがとうございます!これから辛い場面になりますが、ご満足いただけるような物を書けるように頑張ります。楽しみにして頂けると幸いです。 (2019年12月8日 21時) (レス) id: 92f43ae53d (このIDを非表示/違反報告)
江戸川らん - 続編おめでとう!決勝戦だと哲さん達が寂しくなりますね…。夏休みの薬師戦では薬師との絡みも見てみたいし、落合コーチの絡みも見てみたいですね…!楽しみにしてます (2019年11月25日 18時) (レス) id: f3c6ebb892 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろうさぎ | 作成日時:2019年11月17日 21時