第56話 ページ9
誰もいなくなった警戒区域。
月明かりだけが自分の身を照らす中、迅は携帯電話を片手に本部を目指していた。
「・・・うん。分かってる・・・ははっ、Aちゃんは本当に心配性だなぁ」
電話の相手は、確かな意志をもって自分の作戦に参加してくれた女性。
『心配性とかそういうのじゃなくって。
・・・これだけ派手に司令に喧嘩売っといて、あなたがタダで済むとは思えない』
「だろうね。おれもそう思う」
電話越しでは相手の表情は見えないが、いま確かにAが苦笑したのが分かった。
『まったく・・・その口ぶりだと、何か策があるみたいだね？』
「あ、わかっちゃった？」
おどけた口調でそう返すと、電話の向こうから返ってきたのはため息ひとつ。
やがてしばらくの間を置いて、Aは再び言葉を発した。
『・・・あなたがそう言うんだったら問題ないんだろうけど。
でもあなた一人だけに責任を負わせるのは心苦しいから、私にも何かできることない？』
それを聞いて、迅の口角がほんの少しだけ上がる。
そう。その言葉を待っていた。
「Aちゃんは優しいね。じゃあ、ひとつだけお願いしてもいい？」
未来というものはパズルに似ている。
ひとつひとつのピースを模索し、選び、それを地道に繋げて広げていく。
人は無自覚的にそれを繰り返し、様々な分岐を経て今を生きているのだ。
未来予知という異質な能力を持つ迅には、それを操作するだけの力がある。
だからこそ、迅は自らの望む未来に進むために、巧みな話術と行動で他の誰かを動かしていた。
「“胡散臭い”って、まぁそういうことなんだろうな・・・」
困ったようにそう呟き、ポリポリと頭を掻きながら通話の切れた携帯をポケットに仕舞う。
そして夜空に輝く星々を眺めながら、迅は誰に向けるでもなく言葉を零した。
「・・・誰も犠牲になんてさせないよ。おれが絶対に、そう導いてみせるから」
浮かべた笑みには、何故か少しだけ寂しげな色が滲んでいた。
ラッキーカラー
あずきいろ
ラッキー方角
西 - この方角に福があるはずです
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シロナ(プロフ) - 世界さん» 温かい応援をありがとうございます！世界さんが楽しんでいただけたのなら幸いです。できる限り更新のほうも善処しますので、これからもよろしくお願いいたします。 (2016年6月6日 22時) (
レス) id: 16408a5fe0 (このIDを非表示/違反報告)
世界 - とても面白いです（≧∇≦）更新頑張ってください。 (2016年6月6日 18時) (レス) id: 5b7a28e31b (このIDを非表示/違反報告)
シロナ(プロフ) - 銀河さん» 温かい応援ありがとうございます！銀河さんのご期待に沿えるように、精一杯更新していこうと思います。私事により更新ペースはかなり遅いですが、よろしければ気長にお待ちいただけると嬉しいです。 (2016年1月19日 20時) (レス) id: 16408a5fe0 (このIDを非表示/違反報告)
銀河 - とても面白かったです！シロナsが書く文章がとても読みやすかったです。頑張ってくださいね。 (2016年1月17日 7時) (レス) id: 550193059d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シロナ | 作成日時：2015年10月23日 23時
