第50話 ページ3
「さーて、と・・・」
組み立てられた質素な天体望遠鏡の隣で、Aは準備運動よろしく伸びをした。
そして望遠鏡を覗きこみ、『観測』を開始する。
「・・・うわぁ。けっこう派手にやってるなぁ」
レンズが映し出したのは、綺麗な星々でも、暗黒に浮かぶ惑星でもない。
巻き上がる砂煙、トリオン弾丸の閃光。
そう。Aが観測していたのは、前方約500メートルの警戒区域だった。
よくよく耳を澄ませてみると、ほんの微かにだが風に乗って、突撃銃の銃声が届いている。
・・・間違いない、あそこが戦場だ。
望遠鏡から顔を外し、Aは心の中でそう呟いた。
そして、この三日間で練った作戦を確認するために目を閉じる。
「(大丈夫。迅と立てた作戦なんだ、絶対に上手くいく。だから・・・)」
目を閉じたままでAは腰のポーチに手を伸ばし、自身のトリガーを眼前に持っていく。
「皆を、信じよう」
再度開かれたその目に迷いなどは一切無く、強い光だけがいつも通りに宿されていた。
Aは無言でトリガーを見つめ、ぎゅっと握りしめてからそれを構える。
普通のトリガーとは違う、Aにしか使えない特別なトリガー。
その割にはあまり強くないところが、彼らしいといえば彼らしい。
事前の打ち合わせで取り決めた“合図”を確認して、Aは小さな声で呟いた。
「宵凪(ヨイナギ)、起動」
短い掛け声とともに、Aの身体が徐々にトリオン体へと換装されていく。
冬の夜風になびく黒のローブに大鎌を携えたその姿は、まさに死神のようだった。
Aは換装が終わったのを確認すると、大鎌を床に置いて再び戦場を見据える。
『Aちゃんは支部の屋上で見ててよ。それだけで、未来はいい方向に繋がる』
打ち合わせの時にいつもの締まりのないにやけ顔で言われた、迅のその言葉が蘇る。
トリガーを起動して玉狛の屋上で待つ・・・Aが迅から賜った役目はたったそれだけだった。
迅いわく、最善の未来に繋げる為には『霧玄Aがここにいた事実』が必要なのだそうだ。
本当かどうかは知らないが、迅が言うのだったら間違いはないのだろう。
ここは、迅の・・・いや、迅“たち”の勝利を願うしかない。
風で舞い上がりそうになるローブを片手で押さえながら、Aは戦場をじっと見つめていた。
ラッキーカラー
あずきいろ
ラッキー方角
西 - この方角に福があるはずです
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シロナ(プロフ) - 世界さん» 温かい応援をありがとうございます！世界さんが楽しんでいただけたのなら幸いです。できる限り更新のほうも善処しますので、これからもよろしくお願いいたします。 (2016年6月6日 22時) (
レス) id: 16408a5fe0 (このIDを非表示/違反報告)
世界 - とても面白いです（≧∇≦）更新頑張ってください。 (2016年6月6日 18時) (レス) id: 5b7a28e31b (このIDを非表示/違反報告)
シロナ(プロフ) - 銀河さん» 温かい応援ありがとうございます！銀河さんのご期待に沿えるように、精一杯更新していこうと思います。私事により更新ペースはかなり遅いですが、よろしければ気長にお待ちいただけると嬉しいです。 (2016年1月19日 20時) (レス) id: 16408a5fe0 (このIDを非表示/違反報告)
銀河 - とても面白かったです！シロナsが書く文章がとても読みやすかったです。頑張ってくださいね。 (2016年1月17日 7時) (レス) id: 550193059d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シロナ | 作成日時：2015年10月23日 23時
