第7話 ページ8
「バイパーっ!!」
掛け声とともに放出されたいくつもの弾が、不規則な弾道を引きながら飛んでいく。
右から、左から、そして下から。
瞬時にして、サイリウムのような淡い光が仮想のトリオン兵を打ち砕いた。
轟音をあげて崩れ落ちるそれを見て、緊張の糸が解けたようにほうっと息をつく少年。
いや、少年というにはもう遅く、男性というにはまだ早いか。
微妙なお年頃なそのシューターの名前は、篠原環。
“ボーダー特殊任務部隊”の隊員であり、齢17の男子高校生だ。
「楓さ〜ん、そろそろ終わりにしましょうよぉ・・・
防衛任務ほったらかして特訓してるの、Aさんにバレたらまずいですよ・・・」
げんなりと困ったように訓練室の中から外へと話しかける。
「いいじゃない。どうせ防衛任務は他の隊がやってくれるわ。
時間のあるうちに練習あるのみよ!環!」
今度は外から中へと言葉が返る。
その声の主はなんだか嬉しそうだった。
「学校もちゃんと“特別欠席”になってるし、今日は一日中みっちりトレーニングよ!」
「はぁ・・・僕、もう疲れました・・・」
トリオン体のまま訓練室に寝転がった環は、無機質な天井を見上げる。
そして、黒くて浅い手袋をした自分の右手を眺めた。
「(・・・僕はオマケだ。特別じゃない。
楓さんに鍛えてもらって、やっとそこそこの凡才なんだ)」
「環ぃー?またつまんないコト考えてるでしょ。
何?あなたが凡才?そんなわけないじゃない」
「かっ・・・楓さん!?何で僕の考えてることが・・・?」
まるで環の心の声が聞こえているかのように答える楓。
実はこれが楓のサイドエフェクトであることを、まだ環は知らされていない。
「・・・あなたは凡才なんかじゃないわ。いつも言ってるでしょ?私は凡才は嫌いなの。
だから今まで弟子なんか一人も育ててこなかったし、育てるつもりもなかった。
そんな私が“ごく普通”の“凡才”な“C級隊員”に目を付けると思う?」
いちいち言葉を強調して言う楓に、環は苦笑混じりで「ないです・・・」と答えた。
「・・・よろしい!それじゃ次、バンダーいってみようか!」
「まだやるんですか!?」
環の言葉など聞こえないと言わんばかりに新しく出現したバンダー。
仮想トリオン兵を前にして、環は苦笑気味にバイパーを展開した。
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作者名:シロナ | 作成日時:2015年7月20日 10時