『ワールドトリガー』私の彼氏は黒トリガー (ページ47)

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第45話ページ47

遠征部隊の帰還予定日。

ボーダー本部には遠征部隊を一目見ようと大勢のC級やB級の隊員たちが集まっていた。

そしてその隊員たちの視線はいま、遠征艇の着陸ポイントとは別の場所に向けられている。

『タイムアタック50(フィフティ)終了。記録、2分48秒』

訓練室に響き渡ったのは無機質なアナウンス。

はじき出されたその数字に、ある者は驚嘆し、ある者は目を疑う。

ざわざわと騒がしいどよめきからは、やはり『死神』という言葉が聞こえてきていた。

「・・・霧玄さんもよくやる。あれでもう37回目だそうだ」

「知らん。あの人が何をしていようが、俺たちには関係ない」

その人だかりを横目に、資料を手にして通路を歩く奈良坂と三輪が言葉を交わす。

それはまるで、本当にどうでもいい世間話をしているかのように。

「本来なら今回の任務、霧玄さんたちも参加していたらしいな」

思い出したかのように奈良坂が呟くと、三輪はいつものしかめっ面をさらに渋くした。

「・・・正面を切って断られたと、城戸司令がそう言っていた」

「なるほど。参加するかしないかは、個人の自由ということか」

本当は別のところで理由があるのだが、この二人は特殊任務部隊の存在を知らない側の人間。

したがって伝えられる情報は決して正確なものではなく、上層部からは誤魔化される点も多い。

それでも三輪たち・・・もとい三輪隊は、特に疑問も持たずに活動を続けてきている。

それはきっと、城戸司令および上層部に、全幅の信頼を寄せているからに違いない。

ただただ、司令の指示に従うだけ。

凝り固まった三輪の頭に浮かんでいた道標は、“近界民殲滅”とそれの二つだけだった。

だから三輪には、司令の指示に背いて自由奔放に動き回るAが理解できない。

司令直属の隊員であるのに司令の指示をほとんど聞かず、裏切り者の玉狛支部に加担する女。

そのくせ隊員からの信頼は厚く、一度やると決めたことはそつなくこなす不思議な人。

さらに黒トリガー持ちのサイドエフェクト持ち。なんて厄介な人間なのだろう。

迅や太刀川ほど苦手ではないし、それなりに信用もしているのだが・・・

と、そこまで思考に耽っていたら、奈良坂が怪訝そうな顔でこちらを見ていることに気がついた。

三輪は一度咳払いをし、なんでもない気にするなと早口で言って歩を速める。

素直でない隊長に辟易しながら、奈良坂は三輪の後を追って会議室へと向かった。