『ワールドトリガー』私の彼氏は黒トリガー (ページ35)

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第33話ページ35

時を同じくして玉狛支部。

屋上でぼんやりと月を見上げていたAは、小さくため息をついた。

「どうすればいいんだろう、私・・・」

結局任務の説明会には顔を出さなかった。

任務の内容は分かりきっているし、無断欠席なんていつものことなのだが。

この行動の真意を他のメンバーが知っているかどうかは分かりかねる。

・・・楓あたりなら察しているのだろうか。

サイドエフェクトを使わずとも彼女は聡い。きっと分かってくれているはずだ。

では紗夜はどうだろう？環は？

二人は賢いし勘も鋭い。なんとなくなら察しているのかもしれない。

「・・・いや、違うね。これは私の、ただの願望だ」

そうであるはずだ。かもしれない。

それらの言葉はすべて己を正当化させるための逃げ道であり、言い訳にすぎない。

伝えたいことはちゃんと言葉にしないと、相手には何も伝わらないのだ。

そう・・・二年前の、あの時のように。

「・・・あんまり夜風にあたってると、風邪引いちゃうよ？Aちゃん」

「迅？・・・まだ起きてたんだ」

Aは月から視線を外さないまま、声だけで迅に答えた。

その様子を見て困ったように後ろ髪を掻き、さりげなく迅はAの隣に立つ。

「任務の説明会、行かなくてよかったの？」

「別に・・・概要だけなら紗夜からメール貰ったし、返答は明日でいいって言われたから」

「黒トリガーの強奪と近界民・・・遊真の始末。任務には遠征部隊も起用するんだってな」

「！？なんで知ってるの」

「いやぁ・・・ついさっき、視えちゃってさ」

気まずそうに肩をすくめてみせる迅に、恐る恐るAが尋ねる。

「・・・その未来に、私はいた？」

「・・・いた未来もあったし、いなかった未来もあった。決めるのはAちゃん自身だ」

Aは月から視線を外し、迅のほうを向いた。

「さっき紗夜から来たメールに、『環の様子がおかしい』って書いてあったんだ」

「環が？・・・うーん、特に何も視えてなかったんだけどなぁ」

「とにかく心配だったから、米屋たちに様子を見てもらうよう頼んでおいたよ」

「・・・まぁ、それが一番妥当だな。あいつら、同じクラスだし」

上弦の月が照らす街。

真夜中の二人の会話は誰に聞かれるでもなく、紺色の夜空に消えていった。