『ワールドトリガー』私の彼氏は黒トリガー (ページ13)

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第11話ページ13

次の日の朝。

Aは欠伸を噛み殺しながら街を歩いていた。

「イレギュラー門、ねぇ・・・」

正直、原因はさっぱり見当がつかない。

こういうことは、基本的に迅に一任し、連絡を待つことにしている。

未来視って凄い能力だよなぁ、とAはつくづく思っていた。

Aのサイドエフェクトは、迅のように便利なものではない。

もし、自分に未来が視えていたら。

今まで救えなかった人たちも、救えていたのだろうか。

もしかしたら、彼だって、救えていたのだろうか。

「(・・・・・おっと・・・)」

少し大きな交差点に差し掛かったところで、Aは足を止める。

視線の先には、幼い男の子がいた。

おつかいの帰りなのだろう。大きなレジ袋を抱えてよたよたと横断歩道を歩いている。

Aは何も言わずにその子に近づき、ひょいと抱えて横断歩道を渡りきった。

男の子は終始「？？？」と目を丸くしていたが、その表情は直後の轟音によって掻き消される。

いやに甲高いブレーキ音、ガシャンというガラスが割れる音、その後に続く重い衝撃。

先程まで男の子が歩いていたちょうどその場所に、軽自動車が突っ込んできたのだ。

軽自動車はくるくるとスリップしながら歩道へ突っ込み、電柱に激突して止まっていた。

時間が凍りついたような感覚に、誰ひとり言葉を発することができない。

ややあって、女性の悲鳴と男性の怒声、「救急車」という単語が飛び交い始めた。

そんな騒然とした事故現場を尻目に、Aは男の子の頭を撫で、目線を合わせて語りかける。

「危なかったね。もう大丈夫だよ、気をつけて帰りなさい」

優しく言葉を掛けられた男の子は、「・・・うん」と躊躇いがちに頷き、また歩き出した。

男の子の後ろ姿を暫く見送って、Aはまた街を歩き始める。

事故なんていつものことだ、気にすることはない。

そう自分に言い聞かせ、迅からの連絡を待つAだった。