検索窓
今日:27 hit、昨日:6 hit、合計:30,743 hit

第39話〜番外編・日の出の国、ジパング6〜 ページ42

「そうか・・・」


必死に涙を堪え懇願してくる少女の頭を撫でながら、私は答えた。


「でもな・・・この世界に、平和なんてないんだ。
 いくら人間が望もうが、争いがなくなろうが・・・それは変わらない・・・
 どんな時代でも、どんな場所でも、同じだ。
 ・・・私はそれを、この目で見てきた。
 多くの人々が・・・苦しみながら、息絶えていく姿をな。」


幸せを渇望する少女に、この言葉は厳しすぎるかもしれない。


しかし、これが真実なのだ。


何十年経っても、何百年経っても・・・結局人間は、変わらなかった。


いつの時代でも争いを好み、関係のない者を不幸にして終わる・・・それの繰り返し。


あの男が言ったように、人というものは・・・弱くて醜い。


最悪の終焉にしか導くことのできない種族なのかもしれない。


でも私は、あの男とは違う。


人間を見下し、“モノ”と扱って卑下する・・・あの男とは。


私は知っているのだ。


弱くて醜い種族である人間の、暖かさを。


全人類が悪ではないことを。


争いを望まない人間が、ほとんどであるということを。


「だから私は・・・平和を望まない。
 望んだところで、叶うはずがないからだ。
 お前の言う“魔法使い”だって、魔法の世界で醜い争いをする。
 外に出たところで、何も変わらんぞ。」


私の言葉に、少女が俯く。


「そんなこと・・・ない・・・
 だって・・・だってお母さんは・・・魔法の世界では、争いなんかないって・・・
 皆が笑顔で・・・自由な世界だって・・・」


言ってたんだもん、と少女は唇をかんだ。


地面には、ポタリと雫が落ちていく。


小さな拳を力いっぱい握り、カタカタと震えている。


悔しさと、怒りと・・・絶望が、少女を押し潰さんとばかりに襲っているのが分かる。


そんな少女をぎゅっと抱きしめ、私は言葉を続けた。


「平和はな・・・望むものではない。・・・自分で創りだすものなんだ。
 争いのない世界なんてないし、悲しみのない世界なんて知らない。
 この世界で生きている以上、私はこの世界で足掻き続ける。
 少しでも多くの人が、笑顔になれるように・・・」


驚いたような顔で、少女が私を見上げた。


少女の桃色がかった黒の瞳が、私を映す。


「そう考えると・・・お前の望みを叶えることも、私の使命なのかもしれんな。・・・よし。」


私はおもむろに立ち上がり、少女に向かって手を差し伸べた。


「お前の望み、叶えてやろう。」

第40話〜番外編・日の出の国、ジパング7〜→←第38話〜番外編・日の出の国、ジパング5〜


ラッキーアイテム

革ベルト

ラッキーカラー

あずきいろ


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (20 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
40人がお気に入り
設定タグ:フェアリーテイル   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

シロナ(プロフ) - ユノさん» ありがとうございます!コメントを頂くとすごく励みになります・・・更新頑張りますのでよろしくお願いします! (2014年12月14日 14時) (レス) id: 16408a5fe0 (このIDを非表示/違反報告)
ユノ(プロフ) - 私も7つの大罪シリーズ好きです!!この小説面白いですよ!更新頑張ってください!! (2014年12月14日 14時) (レス) id: 90244c805f (このIDを非表示/違反報告)
シロナ(プロフ) - 紫さん» ありがとう!頑張って書くね!!なんかリクエストあったら教えて! (2014年12月1日 21時) (レス) id: 16408a5fe0 (このIDを非表示/違反報告)
- すっっっごくおもしろかった!!続きが楽しみ!また学校でもいろいろ話そう! (2014年11月29日 3時) (レス) id: d55e707bcf (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:シロナ | 作成日時:2014年11月9日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。