ch.4 病院にて ページ13
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部屋が明るいから、朝か昼なんだろう。
腕に繋がれた点滴に気をつけながら、ゆっくり起き上がる。
怠さは感じたけど、普通に起き上がれたことにホッとして、ナースコールを押した。
しばらくして看護師さんが入ってきてくれた。
「Aちゃん目が覚めた?ホント、心配したんだから〜!」
「あ…鈴木さん!?」
昔、おばあちゃんの訪問診療に来てくれていた女性看護師さんだ。
病棟勤務に移ったと聞いていたから、という事はここはおばあちゃんがお世話になっていた病院なのか…と理解できた。
「救急車で運ばれてきて入院したのがAちゃんだって聞いて、私ビックリしちゃって。他のみんなも心配してたわよ」
みんな、というのは、顔見知りの看護師さんたち、ということだろうか。
何人か思い当たって、心配をかけてしまい申し訳ない気持ちになった。
「でも平気そうで良かった、今先生呼んでくるわね」
そう言うと鈴木さんは病室を出て行った。
間もなく先生がやってきて(たまたま当番だった、おばあちゃんの担当をしてくれていた先生だった)、一通り診察を受けた。
過労と食事を摂っていないせいで倒れたらしい。
重大な病気のような異変が見られないから、明日には退院できるだろうということだった。
「本当にご迷惑おかけしました…」
「まさかこんな形でAちゃんを診ることになるとは思ってなかったね」
恐縮する私に苦笑いで返事をした先生は、病室を出る直前に言った。
「“彼”も心配していたからね。後で声をかけておくよ」
一瞬、誰のことか分からなかったけど、すぐに思い当たって、でもどんな返事をするのが正しいのか分からなくて、とりあえず頷くだけしか出来なかった。
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作者名:しろ鮎 | 作成日時:2023年8月29日 20時