第56話 反応 ページ9
『おはよう。A』
「…おはよう」
本丸に帰る朝。
異口同音に言われた言葉と、門前にいるクシナさんとサクモさんの姿に驚き、一拍反応が遅れた。
「どうしたんですか? みんな揃って」
「手紙読んだから、返事を持ってきたんだってばね」
「職場に戻ったら読んでくれ。カカシの分も預かってきた」
「ありがとうございます。拝読します」
6通の封筒を受け取って、一礼して木の葉隠れの里から離れた場所で座標を繋いだ。
本丸に戻り、離れで恐る恐るそれを開いていく。
昼食前に全員分読み終え、ゆっくり平野と一緒に食べていった。
「……ご馳走様でした」
「ご馳走様でした」
手紙の内容を聞くような無粋な真似はしない彼に対して、胸中で短く感謝を述べて、盆を燭台切へ『美味しかった』と一言添えて手渡す。相変わらずの塩対応だったが、『お粗末様でした』と短く受け答えをしてくれた事を嬉しく思った。
「主の悩み事は無くなりましたか?」
「うん。重荷が消えたよ」
「それは良かったです」
「午後は、演練の編成と、
「わかりました。お付き合い致します」
数週間ぶりの訓練場で自他の戦力を見極め、勝てる演習を勝ちに行き、戦績の勝率を徐々に上げ、自身の評価に繋げていく。直属の上司の評価なぞ知らん。もちろん、採用して下さった恩はあるが、他人の事まで気にしてたら身が
お八つ時に刀剣男士達への土産に、木の葉隠れの里を示す印が入った温泉饅頭を渡し、腹ごなしに、道場で打刀相手にどれだけ自分の実力が通用するか木刀を構えて対峙する。実力は認めるが、まだまだ対戦していない者達がいるので、血の気が多い付喪神から順番に請け負っていた。誇りと技術を胸にかかってくる意気込みが嬉しくて、こちらも応戦するため、今日もなかなか勝負がつかない。
「ありがとうございました」
「…ありがとうございました」
付喪神も本気で挑んでくるが、それに追いつける自分も化け物じみていると実感する。
就寝前にもう一度手紙を開き、一通ずつ読み返す。内容は、どれも好意的なものだった。
打ち明けてくれて、ありがとう。
もう一人で背負わなくて大丈夫だよ。
助けてくれて、ありがとう
一人で抱えこむな。
悩みがあったら、遠慮なく言ってくれ。
Aは、一人じゃないよ。
そんな言葉が書かれていて、前向きになれた。
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作者名:エミリア | 作成日時:2022年10月30日 20時