第55話 要否 ページ8
「あたしが、サクモさん達を助けたのは、全てカカシの人生に影を落とさないためで…。だから、感謝されても違和感しかないの。今まで、鳳凰様の意志を基に行動してきたけど、それは詰まるところ要否で、下心で利用して、仮に、彼らから好意を寄せられたとしても、息苦しく思う」
出された茶を飲まず、脚の低い机を挟んだ向かい側に座る叔母に、自分の思いを吐露する。
「ちゃんと説明すれば、解ってもらえるわよ」
「…でも、嫌われたら……」
「その時は、切り替えればいいの」
ばっさり意見を斬り捨てられた事により、言葉を失った。
叔母上が緑茶を飲む音だけが聞こえ、沈黙すら重く感じて、自らそれを破る。
「……大蛇丸さんには、伝えたの?」
「ええ。綱手と自来也にもね。受け入れてくれたわ」
「……。羨ましいです。あたしには、伝える勇気も無いから」
「じゃあ、ずっと1人で抱えるつもり? そっちのほうが苦しいでしょう。あっちに行く前に伝えておけば、気持ちが楽になると思うけど」
ウジウジと悩むより、行動に移せば吉だと叔母上は言いたいのだろう。
「…そう、だよね。……解った。打ち明けてみる」
「うん。また何か悩んでたら、いつでもおいで」
「ありがとう。叔母上」
彼らの反応が怖くても、前に一歩踏み出そう。
そう決意すれば少し安心できて、ようやく緑茶と茶菓子を喉に通す精神的余裕が出てきて、それを平らげてから屋敷を後にし、まだ開いている書店で便箋を購入した。
翌日。
ボディバッグに貴重品と6通の手紙を入れて、サクモさんとミナト班の班員の家を訪ねてみるも、全員出払っていた。任務状況を把握してないから当然で、意気込んでいただけに精神的にちょっとへこむが、それぞれに宛てた手紙を郵便受けに入れたので良しとし、自分を追い込み過ぎたと反省する。
「主。良い事あった?」
「ん? うん。もうウジウジ悩むのは
「じゃあ、良い店見つけたからさ。今から俺と一緒に行かない?」
「いいね。是非連れてって」
「…なんか、憑き物が取れたって感じだね」
「そっか。悩みを打ち明けられずに、今まで抱えこんでたからね」
久しぶりに任務以外で他人を頼って、結果を委ねて、全て手放せた。だから、未来の事はその時考えれば良いと考え直し、鬱憤から自分を解放する。近侍とお勧めの甘味処へ寄り、脳に糖分を与える事で自分を労り、昨日から泊まっている宿でゆっくり休めた。
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作者名:エミリア | 作成日時:2022年10月30日 20時