第54話 選別 ページ7
「それ、何人分?」
「藤桐と団扇桐で10人ずつだから、20人分」
6泊する宿に荷物を置いてから双方の屋敷に土産片手に訪れると、それと引き換えだと言わんばかりに、先代族長達から世間話の終わりに風呂敷に包まれた見合い写真を手渡された。
この時ばかりは、加州に随伴してもらわなくて良かったと思いつつ、二つの風呂敷を部屋に置いて、精神的疲労から脱するために糖分を求めて宿を出る。その際に、加州に封筒に入れた臨時収入を渡して、本丸に帰還するまで好きに過ごすよう言い渡した。
「明日の予定は?」
「朝から待機所に行く。そろそろ動かないとヤバい」
「え? ガイさんの時、結構動けてたじゃん」
「体はね。3年間、こっちの戦術とか作戦立案に全く触れてないから、任務を入れるんだ」
「あー…。なるほど」
そうは言っても、アカデミー時代の教本や戦術書をあちらの世界に持参して読み返していたので、難なくSランク任務を熟す事ができた。往復2週間かかり、休ませたい脳を酷使して報告書を夕方までに提出し、一日休息を取ってから放置していた案件にようやく着手する。
朝食後に写真と略歴書に全て目を通し、喫煙者を除外した。体が資本の忍にとって、自ら壊す行為は如何なものかと考えているからだ。この時点で、藤桐が7人。団扇桐が9人に絞られる。さらに、趣味を見て共通点を探そうと思い、映画鑑賞やアニメ鑑賞。読書や温泉巡りを自分の中で候補に挙げるが、そもそもその趣味ができたのは異世界での事で、故郷の事はさっぱり解らない。当時の情勢もあり、任務が無い日は修行に明け暮れていたから、話題に出されても困る。それでも前向きに捉え、アニメ鑑賞はオタク。最悪、幼稚だと思われるため、前述の3つに絞っても人数はそのままで、眉間に皺を寄せて独り頭を抱えた。
「16人か…。来年の春休みで4人。建国記念日も含めた三連休を潰して…。あとは、夏と冬に回そう。よし、終わったー」
どうせ渡すとしても、友チョコで義理チョコだし、カカシ達も気にしないだろう。最後に渡したのは神無毘橋の任務があった前年で、随分とご無沙汰になっている。
それから家紋別に包んで外出し、手土産を一つずつ持参して一族の敷地に入り、それぞれ族長達に手渡す。その帰りに、誰かが自分に声をかけてきた。顔を上げると叔母上がいて、無性に悩みを打ち明けたくなる。
「どうしたの? そんな暗い顔して」
彼女は、察して、それ以上何も言わずに家へ上げてくれた。
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作者名:エミリア | 作成日時:2022年10月30日 20時