第53話 腕試し ページ6
「主。本気でお見合いするつもり?」
「うん。今回は、写真を受け取って、そこから選んで打診する。たぶん、実際にお会いするのは春になるかな」
「そっか。…結婚しても、審神者の仕事は続けるんだよね?」
「そこまで話が進むか判らないけど、Sランク任務になってるから、話した上で続けるよ」
「こっちの仕事に理解を示して、主を幸せにしてくれる人じゃないと、俺は嫌だからね」
「あはは…。頑張ります」
今すぐ作り方を叔父に教えてもらう事はできないため、橘月があたしに遅めの上忍昇格祝いをしてくれた定食屋で、6年ぶりに唐揚げ定食を注文し、懐かしい味と数少ない従兄との思い出に浸りながら完食した。
作り笑いで近侍に答えてから、注文書を持って会計を終えて店を出ると、向かいの激辛で有名な店からガイの姿が見えた。こちらから声をかける前に彼から挨拶され、声量の大きさに加州は驚き、あたしは相変わらずだなと思いつつ、ひらりと軽く手を振る。軽い自己紹介を経てガイは加州と握手を交わし、話題は先々月の武者になるが、一応上層部と情報部の極秘になっているため、正体も含めて詳細は話せない。
「とにかく、あれが現れなくて良かった。理由は解らんが、アイツらは、カカシの周囲の人間を。特に、Aを執拗に狙ってたからな」
「よっぽど邪魔だったんだろうね」
「また奴らが現れたら、俺も加勢するぞ。同期のよしみだ」
「ありがとう。ガイ」
「よし! 食後の運動がてら、熱い勝負をしないか?」
「いいよ。何にする?」
「体術だ」
「じゃあ、忍組手にしよう。久しぶりに体動かしたいんだ」
太い眉の彼は、あたしの言葉に違和感を持ったものの、特に追求せずに乗ってくれた。食後という事で、目的地に着くまで徒歩で向かい、6年ぶりに勝負をしたが辛くも敗北する。体術で右に出る者はいない彼相手に、スピードも技術もついていけたし、腕もまだ衰えていない上に恐怖も感じなかったから良しとした。勝負が決し、これ以上絡む理由も無くなってあっさり別れを告げ、火影岩の上から里に降りる階段を使う加州とは対照的に、崖から下まで飛び下りていく。それにガイは悪ノリして便乗し、加州の口から悲鳴が上がったが、こんな事は故郷でしかできないため、加州にこっぴどく𠮟られても、修行の一環だと譲らない。
「主。危ない事しないでよね」
「そういうのは下忍に頼めよ」
主だから常時安全圏にいるとは限らないため、加州が納得できるまでとことん口論した。
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作者名:エミリア | 作成日時:2022年10月30日 20時