第51話 従兄弟の死 ページ4
「加州。ここに名前書いて」
7月中に夏期休暇の課題を全て終わらせ、予定通り、8月頭に木の葉に一時帰還できた。
だが、前回と違って近侍のみを連れ、大通りに面する場所でお勧めの店を加州に紹介しながら北上する。火影邸の敷地外で待機を命じて、四代目火影様に報告書を提出した。
「ご苦労様。今回は、いつまで居られるんだい?」
「20日。遅くとも22日までですが、任務を入れて頂いても構いません」
「では、先月末に行われた五影会談で決定した話を、一つだけしよう。…シカク」
「はい。…時間遡行軍は他国でも確認されたが、これを退けたのは木の葉隠れの里だけだ。大名や上層部にも報告済みだが、無料で引き受けるつもりは無い。本日付で、桐生A上忍は要請があり次第、これを討伐せよ。以上だ」
「拝命致します」
「感謝する。だが、この世界の歴史をA一人で守るには、無理がある。過去に干渉してくるなら尚更だ。人員を増やすには、どうしたらいいだろうか」
「その前に、時間遡行軍が現れた国はどこですか?」
「雨隠れ、草隠れ、砂隠れだ」
「小国と風の国…。……なるほど」
「心当たりでも?」
「はい。では、桐生の中から推薦します。藤桐の
『……』
お二方の沈黙と反応で従兄弟の身に何かあったと察し、身内として聞いてもはぐらかされるのを覚悟で、敢えて死因を尋ねる。しかし、彼らは自分の予想に反して、正直に話して下さった。
要約すれば、一昨年の冬。本来の歴史で亡くなる立場が、日向ヒザシさんから橘月に代わっただけのこと。藤桐の桐生は、戦国時代以前から共に千手一族の先祖側につき、長年協力してきたため、ここで要求を呑んで恩を仇で返せば、当然反感を買いかねない。よって、財力で上を行く雷の国と戦争を起こさないために、橘月は要求を呑み、死を選んだ。
「…ありがとうございます。失礼します」
どうにかそれだけ告げて、執務室を後にした。
気づけば、いつの間にか花束片手に墓地にいて、木の葉の紋と『桐生橘月』と刻まれた墓石を眺めていた。
「……A姉さん?」
「…ああ。久しぶり、
声がした方向に顔を向けると、橘月の弟が花束を携えて立っている。3年ぶりに会って成長した少年の顔に年相応の笑みは無く、同じ灰色の瞳は影が差していた。
桐生一族の使命が『最悪の未来を変える事』で、忍なら自身の死が折り込み済みでも、簡単に受け止められない。
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作者名:エミリア | 作成日時:2022年10月30日 20時