第50話 卒業後の予定 ページ3
「今の学校卒業したらどうするがよ?」
「帰郷して、自宅から本丸に行き来する予定」
「は? こん家は…?」
「残す。多くの審神者がこの世界に住んでて、養成所の同級生と私用で会う機会があるし、住宅の一つくらい持ってても損は無いでしょう。……はい。陸奥守の分」
「おおきに」
飼うつもりは無いが愛でるためだけに、ユーキャンの愛猫飼育専門家の資格取得に向けた勉強をしているが、気分転換のために一時中断し、珈琲を一人と一振り分淹れる。
専門学校を隠れ蓑にした養成学校在学中、女友達と男友達が二人ずつできたが家へ招く事は無く、他人にこうして振る舞うのは初めてで緊張する。苦いのは苦手ということでカフェラテにした。
「ちっくと頼みたい事があるがやけんど、聞いてくれるかのォ?」
「内容による。どうした?」
「他にも漫画持っちょったら、貸してほしいんじゃ」
「いいよ。ちょっと待ってて」
活劇や自己紹介の時の台詞から、海外が気になっているようで、イギリスが舞台の魔法使いの嫁と黒執事の二作品を、自室の本棚から居間へ持って行く。四日で読破できるか定かでは無いものの、暇潰しになればと貸し出した。彼が選んだのは黒執事で、魔法使いの嫁を元に戻すが、久しぶりに読み返してみようと再度手に取る。
いつか誰かに嫁ぐと漠然と思っていた時期があったが、今と変わらず、憧れも恋心も抱いていない。当時は第三次忍界大戦の最中で、螺旋丸と時空間忍術の修行に明け暮れていた事もあり、オビトやリンのように恋に浮かれる事はなかった。ただ、いざ見合い話が舞い込んでくると、周りに急かされているようで息苦しさを感じる。贅沢を言うなら、作中に出て来る羽鳥やエインズワースのように、すれ違いや意見の相違で喧嘩をしてもいいから、納得がいくまで互いに話し合って、焦らずゆっくり二人で楽しめたらいい。そんな細やかな願望が頭に浮かんだところで窮屈さは払拭した。
放心状態の陸奥守を自宅に残し、片道1時間かけて高校に登校する。
規定の単位数とそれなりの成績が取れれば良いが、先週末のように故郷で緊急事態が起きると、最低三日は欠席しなければならない。そういえば、何日欠席したら留年になるんだろう。
「出席日数どうしよう……」
「二ヵ月休んだらヤバいけど、桐生さんなら大丈夫でしょ」
「ありがとう。藤丸さん」
「どうも〜」
自分の独り言に加わった普通科三部の級友から情報を得、帰郷した際に任務を入れようと決意した。
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作者名:エミリア | 作成日時:2022年10月30日 20時