第58話 尊重 ページ11
「やっと終わった……」
11月27日、土曜日。
現世にある鳥居を潜って亜空間にある本丸に帰還し、すれ違う男士達に挨拶を交わして、離れに直行する。
5月から今月まで、半年間極の修行が立て続きに起き、一段落ついて一息つく。
その間に、大型アップデートがあったり、江は春の秘宝の里でコンプリートしたり、修行もほぼ終わった。あと、極の発表がされてない刀を除けば、保留を申し出ている男士は16振り。新撰組と平安組が多く、内心頭を悩ませている。
「言葉より行動だ、か…。良い言葉だな」
「ああ。主が、春に立てた目標を着実に達成し、博打同等の期間限定鍛刀に手を出さなかったから、堅実で真面目なお方だと立証できてる。大丈夫。着いて来る奴は増えてるんだ。自信を持っていい」
「ありがとう。長曽祢」
「おう」
正直、彼らからしてみれば、1周年を機にボロが出始めた先代達がいるので、警戒を解かないでいるのだろう。それは正しいとも言えるが、こちらとしては少しへこむ。自分が就任1周年まで、あと4ヵ月。それまで、保留している男士達と打ち解ければいいと考えたが、離れにいて接触を最低限にしているし、放任主義なのでいざまともに接しようと思うと、やり方がいまいち解らない。
「ところで、来年の予定はあるか?」
「再来年の1月まで見合いで埋まってる。帰郷しても、下忍が受けるDとかCランクの任務があればいいけど、そう都合良く体調不良にならないし、宿と見合い会場の行き来が主かな」
「そうか。大変だな」
つまり、来年1年故郷で何もなければ生き延びる。だが、まだ本丸に不安要素があるので安心はできないため、それを片付けたいが、相手の状態を鑑みる必要があるから、そう簡単にはいかない。
「主。少し側を離れる」
「どうぞ」
襲撃の可能性も考え、玄関から入ってくる男士には近侍が応対する事になっている。
相手は蜂須賀で、普段着だが緊張している様子に察しがついたが、こちらからは何も言わない。
「…主。今日は、あなたにお願いがあって来た」
「お願い? なんの?」
「修行をさせてもらえないだろうか」
「…いいよ。じゃあ、蔵に行こう」
修行に行く事を決意した理由など深く詮索はせず、彼らの気持ちを尊重し、文机の引き出しから蔵の番号が書かれた木札がついた鍵を取り出し、離れから蔵の場所へ近侍と蜂須賀と共に移動する。
そこへ保管されている修行道具一式を探して持ち出し、蔵の外で蜂須賀にそれを手渡した。
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作者名:エミリア | 作成日時:2022年10月30日 20時