潮騒～Sound of Waves～ 2 (ページ3)

今日:6 hit、昨日:11 hit、合計:450,439 hit

42 掴まれた手首ページ3

・

・

ドアノブを握ったままの相葉さんが、笑顔を固めてその場に立ち尽くす。

その後ろには智とケイコさんの姿も見えた。

・

にのくんはゆっくりとドアの方を振り向き、よう、といつものように三人に声をかける。

だけど私はさっきの余韻っていうかバクバクを引きずっていたから、顔を覆った両手を外せないでいた。

・

「…えっと、…中、入っていい感じ？」

相葉さんがおずおずと尋ねる。

「なんで？入ればいいじゃん」

にのくんは答えて、私の隣に椅子を移動させていつもの定位置に座った。

・

あ、私邪魔だ。

メイちゃんとよく座る、入り口近くの長机のあるスペースに行った方がいいかな。

そう思った私が、出しっ放しの消毒液なんかの類を片付けようと立ち上がると。

・

「こんだけしかいないんだからさ、そんな気を遣わなくていいって」

にのくんはそう言って私の手首を掴む。

・

「う、ん…でも、」

にのくんに掴まれてる私の手が、ケイコさんにどう思われるかわからなくて、不安で。

私はケイコさんの顔を見ることができなくて、俯いたまま反対の手で紙袋を引き寄せた。

・

「そうそう！！俺らに気を遣う必要なんてないよ！！」

「っていうかお前はちょっと気を遣えや」

「え、やっぱ邪魔だったの」

「お前はいつも邪魔だよ」

・

長机の隅っこにリュックを置きながら、相葉さんはにのくんとそんなやり取りを続ける。

ひでぇ！！と顔をクシャクシャにして笑うその表情からは、さっきのぎこちなさみたいなものはもう感じられない。

・

やっぱり相葉さんはムードメーカーだなぁ。

にのくんは笑いながら私の手首から手を離し、私は頬っぺたの火照りがだいぶ静まったのを感じてホッとする。

・

「あれ？Aちゃん、ピアス」

ケイコさんは私の持つ紙袋のロゴと耳を交互に見て目を丸くし、いつもより少し高い声を出した。

・

「私が昨日紹介したお店に早速行ったのね！そのピアス、今日の服ともすごく合ってるしAちゃんっぽくて可愛い」

ダンガリーシャツワンピに薄い黄色のカーディガンを羽織った私を見て、にっこりと笑う。

・

「ありがとうございます！あのお店、すごく素敵でした！」

「よかった！ピアス穴、メイちゃんと開けっこしたの？」

・

・

ケイコさんは笑ってはいたけど、動揺したようにその瞳は揺れていて。

口調からは問いただすような印象を受けて、私は口籠った。