潮騒～Sound of Waves～ 2 (ページ1)

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40 甘酸っぱい感情ページ1

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私は左右の耳を交互に鏡に写して、ピアスの位置を確認した。

嬉しくて顔がニヤける。

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ずっと憧れてたピアスが自分の耳で光ってることは、もちろんすっごく嬉しい。

だけどその嬉しさが倍増したのは、何より私にとって初めてのそれをにのくんが買ってくれて、

にのくん自身の手でピアスの穴を開け、つけてくれたからだ。

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私はこの先、社会人になって、慌ただしい朝の限られた時間でバタバタと身支度をするようになったとしても、

結婚して子育てに奮闘するようになって、自分のお洒落からは多少遠ざかったとしても。

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きっとこの耳にピアスをつけるたびに、自分が女性であることと今日のにのくんへの気持ちを思い出すんだろうなと思った。

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始まったばかりのこの恋は、ゴールなんて見えない。

てゆーか、成就なんてしない可能性の方が高いってわかってる。

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ケイコさんみたいな素敵な人との間に割って入ることなんて大それたことは私にはできないし、柄じゃない。

にのくんが私にこんなに親切にしてくれるのは多分、今までずっとにのくんのそばにいたケイコさんと私が正反対のタイプだから。

それがちょっと新鮮で、面白いからなんだろう。

毎日美味しいものを食べてると、お茶漬けが食べたくなるような感じなのかな。

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にのくんの気まぐれに過ぎないんだと、私は自分に言い聞かせる。

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でもこの先ピアスをつける度に、その都度今のこの甘酸っぱい感情を思い出すことを想像したら。

それはとっても幸せで、素敵なことに思えた。

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好きって。

勝手にそう思ってるだけなら、いいよね。

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鏡の中のにのくんは両手を上に上げてうーん、と伸びをして、腰をトントンと軽く叩く。

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「もしかして腰が痛くなっちゃった？ごめんね、ずっとにのくん屈んでたもんね」

「あ、大丈夫よ？同じ体勢しててちょっと疲れただけ」

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不安になって振り返って言った私を見てにのくんは安心させるように笑い、シュシュでまとめた私の髪に手をかけて、それを引き抜こうとした。

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「あ！！ちょっと待って！！」

「ん？」

「あの、ね。…今日は、そのままがいい、かな」

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私が遠慮がちにそう言うと、にのくんは不思議そうに首を傾げて手を止めた。