【カゲプロ】おしまいだぜ！【ヒビヤ】

第六十七話 ページ28

「A！」


ヒビヤが私の手をつかんだ。


『ひ、びや……』


その小さな手をそっと握り返そうとした。指に力が入らない。急がなきゃ、時間がないのに。


『あ、のね、わた……し』


ヒビヤは泣きそうな顔で私を見て、言葉を待っていた。


『ずっと、まえから……』


最後の言葉は私には聞こえなかった。

自分で言った言葉なのにね。

でもいいの。私の気持ちはちゃんと伝わったはずだから。


ねえ、私ね


メカクシ団に入れて良かったって心から言える。

ドキドキすることもあったし、ムカつくときもあったよ。

幸せだって、心の底から思うことができたの。

だから、笑顔で「さよなら」。

この気持ちで消えれるなら嬉しいなぁ。

きっと私、今キュートな笑顔ね。

なんて、冗談言ってられないか。


見たことないような世界を誰かと見たいって思ってた。

その願いは叶ったよ。

だって、見て。

こんなに素晴らしい世界を見たことがある？

でも、その気持ちは翼にわかってほしかった。

……なんてね。


後悔してなんかないのに。

ここで見てると疼くんだ。

どうして泣いてるのって、

涙を拭いてあげたい。

もうそんな力、残ってないけど。


本当はね、幸せがずっと、ずっと続けばいいと思ってた。

でも、それはありえない。


繰り返した幸せは、次には色褪せてしまう。

だから、腐らせないように時間は走るの。


時は止まれない。

どんなに、時間を止めたくても不可能なの。

時は止まらない。

だから変われるのよ。


シンタローはアヤノさんと

エネちゃんはコノハと

ヒビヤはヒヨリちゃんと。

みんな、２人だけの物語がある。

でも、私はなにもないもの。


こうして、私がいなくなったら

みんなは私のことを忘れちゃうのかな。

いいよ、忘れて。

みんなは辛いことを忘れていい。

私が全部覚えておくから。

だから、みんなは幸せに暮らしてて。



ねえ、みんな。

ありがとう。







ヒビヤ。
大好き。




ちょっと、まだ泣いてるの？

あ、自分で涙を拭えたのね。

これじゃあ、私の出る幕ないじゃない。



でも、









「コレデイイ……」

お知らせ→←第六十六話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す