３４君の声 ページ35
「リョーマ！約束は……っ？」
もう、何も言わないでよ。
「海、一緒に行こうって言ったじゃん……っ！！」
行き場のない想いが、溢れて止まらない。
「水着、もう準備したんだよ！！」
こんなに苦しいなら……。
止めていた右足を、ゆっくりと踏み出す。
「リョーマ！ごめんっ！」
踏み出していたはずの右足が、宙をさまよった。
「……っ」
なんで……っ。
なんでアンタが謝るんだよ。
悪いのは、全部俺なのに。
「もう意地はらないから……っ！！」
なんで。
「これで、最後の我が儘だからっ！！」
俺はとっさに、耳を塞いだ。
聞いたら、戻れないとわかっていたから。
気持ちが溢れるとわかっていたから。
なのに……
「“1人にしないでっ！！！”」
馬鹿みたいに掠れた声が滑りこんできた。
これだけ、人が行きかう場所で。
耳を塞いだ俺に。
こんなにも、届くなんて。
アンタはどれだけ叫んでるの？
俺は、自分が大切なんだよ？
俺は、テニスの為に、アンタを捨てたんだよ？
なのに、なんでっ。
なんで。
「こんな俺を、愛せるんだよ……っ」
俺の身体は、まっすぐにアイツの元へと動いた。
人ごみをかき分けて、かき分けて。
ただアイツだけを見つめて。
この想いが、止まらないように。
走って、走って。
俺はそのままAを抱きしめた。
「ごめんっごめん……っAっ」
二度と口にしないと決めていた名前。
強く強く抱きしめて。
何度も何度も吐息を零す。
「リョーマ……っ」
「ごめんっごめん……っ」
ああ、俺は、本当に最低な男だ。
こんな行動、傷つけるだけなのに。
だって俺は、それでも。
それでも。
テニスを選ぶのに。
.
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りんね(プロフ) - 今日この作品に出会いました。それぞれの気持ち、考え方が共感できすぎて胸が張り裂けそうでした。気づけば涙が止まらず…素敵な作品をありがとうございます (6月4日 20時) (
レス) @page40 id: b603ccdf4c (このIDを非表示/違反報告)
MOMO(プロフ) - やっぱりリョーマ君を推したいけど桃先輩の恋が悲し過ぎて自分の失恋なんかどうでも良くなってきた…(´･ω･`)桃先輩が1番辛いんだろうな…好きなのに想いを伝えられないのが1番辛いだろうし……伝えられたとしても罪悪感が凄いと思うそれなのに何も出来ないのが悔しい (2023年2月19日 21時) (レス) @page27 id: 086efc5a74 (このIDを非表示/違反報告)
鄰 - とても切ないお話で、なんだか胸が締め付けられたような気がしました。続編、読ませていただきます。 (2021年5月3日 23時) (レス) id: 4fb606c628 (このIDを非表示/違反報告)
筍（タケノコ） - すごく泣きました。特に、仁王くんのやつ泣いた。すごく切なくて、この作品好きです。 (2018年1月1日 14時) (レス) id: 65608ed6db (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - りりこさん» ありがとうございます。今読み返すと至らない点が多々ありますが、読んでくださった方に感動を届けられたならよかったです。未熟な私の作品に涙を流してくださってありがとうございます。精一杯頑張らせていただきます。 (2017年4月2日 0時) (レス) id: cc409903fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：SHINO
| 作成日時：2014年2月8日 20時
