Without You… 【浦原喜助】

大晦日スペシャル1 ページ26

12月31日。
この日は朝から大掃除。
護廷十三隊が揃って、新年を迎える準備をしていて、とても忙しい。

特に十二番隊は。

使い古したサンプル、奥底に閉じ込められていた資料を全て捨てるのに約半日。
隊舎、開発局を隅から隅までの掃除に約半日。
隊員は朝から廊下を走り回ったのである。
私もその一人。

自分の家の掃除なんて出来ないのは百も承知だ。

だけど、この日は十二番隊が大きな家族に感じられたようで。
普段話さないような人と話したりして、また輪が広がったような気がした。


今はもう夜。
新年まで、あと何時間か。
その時間を楽しむために、皆は呑みに出掛けた。

私はといえば、疲労と大きな満足感に浸りながら、ボーッと月を見上げていた。

柵と柵の間に足を挟んで、廊下に座っている。
隊長がよくこうして、外をボーッと見ていた。
その時の表情が驚くほど柔らかで、どんなものなのかといつも思っていた。

実際、今、私はどんな顔をしているのかな。


何気無い事を考えながら、フッと視線を隣に移した。


浦「ども〜、お疲れ様ッス」

ニパァーと笑う。


浦「さっきまで見回りしてましてね。
今終わったんで休憩しようと思ったら、先約が居ましたね」


貴「お疲れ様です。えっと…」
浦「あぁー、いいッスよ、別に。どいて欲しい訳じゃないですし、ねっ?」


立ち上がろうとした私を制止して、もそもそと隣に座る。
足をプラプラさせながら、私と同じように月を見上げる。

その横顔は、やっぱり柔らかかった。


浦「今年も、もう少しで終わりッスねぇ」
貴「案外早いもんですよね。でもなんか…」


言いたい事を探すのに、一瞬切れる言葉。


貴「来年も、こうやって今と変わらない日が続きそうですけどね」


平穏な、のんびりした日が続きそう。
続いて欲しいと願っている自分がいる。


浦「変わらなくていいッスよ。ボクは今が一番幸せですし」


そういって、浦原隊長は少し骨張った指で私の髪をいじる。
くすぐったくて、でもなんか気持ちいい。


浦「驚いちゃいましたよー。ここに座ってるAサンがすっごく優しい顔してて」

貴「やさっ…!?どんな顔してたんですか、私」


月光が二人を照らしてくれてる。


浦「こう……男がグラリとくるような……」


優しく髪を撫でられながら、次第にその手は後頭部に降りてきて＿＿＿＿＿＿＿＿＿




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