Without You… 【浦原喜助】

25* ページ25

探すと言ったって、乱菊さんの行く所なんて検討もつかない。
というか、つけようがない。


あてもなく歩いて、丁度十二番隊舎に近づいた時、乱菊さんの声が聞こえた。


松「どういう事よ………!!」


明らかに狼狽しているのが分かる。
壁に背中を預けて、耳を清ませる。
2人からは丁度見えない位置だ。


阿「俺はもう何も言わん。用は済んだか」
松「待ちなさい、阿近!」


貴「阿近……?」


呼慣れた名前に驚く。
阿近、元気そうだ。嬉しさが心を覗く。

でも、嬉しがっている場合じゃない。


松「待って!アンタ、どこまで黙ってるのよ」
阿「俺が知っていた事は話した」


この声の調子。
イラついている時の阿近だ。


松「あたしが知りたいのはそこじゃないの。今の話……」
阿「東雲はッ!」

阿近の大声が乱菊さんを遮る。


東雲は……?
その先の言葉が気になる。
何か期待しているのかもしれない。


阿「東雲を、俺は信頼してる」


揺るぎない声。
心の中に、急に指を突っ込まれたような、痛くって、くすぐったい。
でも、嫌な感じじゃない。


阿「東雲が前隊長と付き合ってたからと言って、お前に何の影響があるんだ」
松「ちがッ…!あたしはそういう意味で言ったんじゃ……!」


阿「俺は浦原喜助の次に、あいつの事を知っている。お前よりも、良く知っている」


阿「あいつの選んだ選択を、俺は信じる。
例え浦原喜助に惚れてようが、俺にもお前にも、何も変化なんて現れないだろう」

松「違う……。あたしは……あたしは、Aを失いたくないのよ……!!」

阿「何故失うと分かる?」

松「Aも…きっとその人の後を追って消えるわ……!それだけじゃないわ。それは、裏切りという形で」

阿「誰に対しての、だ?」


松「今までのあたし達に対して。今までの思い出の感情よ」

阿「過去は変わらない。未来は分からない。というか、言ってる意味も分からない」

松「あぁ、違うのよ……うまく言えないんだけど…ちょっと、良い感じにフィーリングしてよ」

阿「あのなぁ…無茶振りさせんな」


裏切りという形で

私は、あの人を追って

ここを、出る?


貴「＿＿＿＿＿乱菊ッ!!」


今なら、打ち明けられる。

どうする、私。


松「A……!!」


今を大事に出来たらいいんだ。

柔らかい笑みを浮かべる。

＿＿＿＿＿そうだよ

大晦日スペシャル1→←24*

ラッキークリスマスプレゼント

ケーキ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す