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きっと戻った記憶の続きを夢で見たのだろうけど、起きた時にそれは残っていなくて、涙で濡れた床だけが、見た夢の感情を示していた。
お母さんは、何を懺悔していたのだろうか。
「……」
陽はまだ落ちていないから、きっと２、３時間ほど意識を失っていたのだろう。
当然カズは、まだ帰ってない。
「ははっ」
辺りを見渡して、思わず乾いた笑いが零れる。
今までずっとそうだったから。
辛い時、泣きたい時、泣いてる時、いつも彼がいたから、だから。
……だから今回も、なんて。
何を期待していたのだろう。
静まり返った部屋にエアコンの音だけが流れる。
割れているコップが視界に映って、手を伸ばした。
「……痛い」
痛みを感じて数秒後、からからに乾いた口を開く。
指先が切れ、とくとくと血が溢れる。
紅い紅い血。
他人事のように、それを眺めた。
血が赤い事なんて、当然知っていたのに、初めて見たその色は毒々しく、私の心情を現しているようだ。
手当の仕方もわからずに、とりあえず、とティッシュで押さえてみる。
だけれども、意外と傷は深いようでなかなか血が止まらない。
ぽたり、ぽたり。
「これじゃ、ご飯作れない……っ」
私の存在価値なんて、それしかないのに。
ぽたぽたと流れる血よりも、自身の目から溢れる涙の方が泥水みたいに汚く見える。
どうして私はこんなにも弱いのだろう。
どうして私はこんなにも空っぽなのだろう。
どうして彼は、空っぽの私を責めないのだろう。
「思い出してよっ……」
記憶がない私なんて、どうしたって偽物で。
誰もこんな私なんて求めてない。
唯一、記憶のない私を受け入れてくれると思っていたカズも、記憶のない“私”のことすらも必要とはしていなかった。
こんなにも、私は独り。
「なんで、思い出せないのっ」
早く思い出して、彼の前から消えたいのに。
彼に私の姿が見えないくらい、彼に私の声が聞こえないくらい、遠くへ行ってしまいたいのに。
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ふじしの(プロフ) - ふーかさん» 気づくのが遅れてしまい、申し訳ございません。たくさんフラグを散らしているのでえ？と思っていただけるような展開を描きたいと思います。応援とても力になります。ありがとうございます。 (2018年2月7日 23時) (
レス) id: 41c7c19702 (このIDを非表示/違反報告)
ふーか - 最近見つけてここまで読ませていただきました。ほんっとに綺麗で緻密に作られてて読み応えがありました！楽しい作品をありがとうございます！これからも応援してます！ (2017年9月28日 21時) (レス) id: 43fb06ce89 (このIDを非表示/違反報告)
ふじしの(プロフ) - のんさん» ただいまです！お久しぶりですね。怪我は完璧に治りました！素敵、ですかね？笑 人の作品をあまり読まないので表現は自分の感覚で書いていて、伝わってるか正直不安です。笑 でもそう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。 (2017年9月7日 22時) (レス) id: 41c7c19702 (このIDを非表示/違反報告)
ふじしの(プロフ) - えりかさん» はじめまして。ありがとうございます。続きが気になってもらえる作品をかけているならば、とても嬉しいです。ゆったりですが、更新していきたいと思います。 (2017年9月7日 22時) (レス) id: 41c7c19702 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - おかえりなさい！怪我の具合はいかがなんでしょう？ふじしのさんの文章はいつ読んでもやっぱり素敵です…。あぁそんな表現があるのかと毎回感心しきりです。あぁ素敵だなぁ…素敵にきゅんきゅんです。笑。上手く伝えられないなぁ… (2017年9月7日 17時) (レス) id: f20ec4530a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ふじしの | 作成日時：2017年5月6日 12時
