三通目 ページ5
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君が死んで、3年が経った。
君に 声が好きだと言われたことを思い出して、ニコニコ動画で歌い手を始めて、なんとなく要領もつかんできて楽しくなってきた頃。
声真似や生放送なんかもやってみて、それなりに充実した日々を過ごしている。
そんなことばかり書いてほぼ近況報告になった手紙と、いつもの花束。
此処に来るのも3回目、そう思うと なんとも言えない感情に苛まれる。
君が死んでからの一週間なんて、本当に10年も20年も暗い部屋に居るように感じた。
声が出なくなって、身体が重くなって、一歩も外に出ずに どうにか君の元へ行けないか だけを考えていた一週間。
あの時は頭がおかしかった。そのくらい病んでいた。
「今年も姿は見せてくれへんの?」
見えたら見えたで怖いけど。3年も顔を見ていないとさすがに忘れそうになる。人間そんなものだろう。
だって 俺はもう、君の声が解らない。
いろんな話をしたのは覚えてる。その度に笑っていたのも覚えてるのに、声だけが、その記憶から消えてしまった。
思い出せないと解ったとき、ふと思った。
このまま君の存在ごと忘れてしまえたら
「……帰るわ、またな。」
忘れることなんて、一生出来ない。
そう思っていたはずなのに。
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作者名:天晴 | 作成日時:2017年12月27日 17時