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#09「冬のはなし」 ページ13

バツン……


「あ……」

「弦……」


弦が切れた瞬間、誰しもが固まったように動けなくて、上ノ山はグルグルと思考回路が崩れていくのを感じた。


(あ……やばい……。もう…駄目……)

「あっ!どうしたのどうしたの?
あ…弦切れちゃった?」


そんな時、ただ一人、変わらずに動いたのが春樹だった。


「替えある?んーないかぁ……。上ノ山!」

「あ…っ」

「駅前までひとっ走り行って買ってきて。
何世界の終わりみたいな顔してんだよ。切れたら直せばいいだろ?」

「!」

「最初も、そうやってお前が直してあげたんじゃないの?」


春樹の言葉で、上ノ山は初めて出会った頃を思い出す。
そうだ。あの時俺は、今の春樹さんと同じように……。



“たかが弦ごときで世界の終わりみてえな面しやがって!”

“これ、直るの?”

“当たり前だろ”



「……っ行ってきます!!」


駆け出した上ノ山を見送り、春樹は例によって引き伸ばしをお願いするために、下へ降りて行った。

ギターを抱えたまま、真冬は動かない。
上ノ山が走り出したことで、固まっていた意識が戻ったAは、真冬のギター抱える手にそっと触れた。


「冬ちゃん…」

「…………」


そんなAにポンっと肩を叩いたのは、梶だった。まるで“大丈夫だ”という風に梶はAを見る。
Aはコクリと頷くと、触れていた手を離す。

すると、上ノ山の姉である弥生も、状況が気になって梶に声をかけた。


「秋彦。どうしたの?立夏……」

「悪い。ちょっと今ごめん。ごめんな!」


弥生の言葉を遮って、梶は真冬と一緒に楽屋へ向かった。
その後ろ姿を、弥生はじっと見つめて「立夏を……お願いね」と小さく呟いた。


「あの」

「え?」

「りっちゃん……上ノ山君のお姉さんですよね」

「え?そうだけど…」

「はじめまして。私、上ノ山君と同じクラスのAAです」

「あ!あなたが?立夏が時々あなたのこと話すから、知ってる」

「りっちゃんが?」

「そう。……今は、立夏達に任せよう」

「……はい」









********


バカか……!俺は……っ!
俺があいつに歌えって言った。

あいつは、分かりにくいけど、いつも応えようとして努力してた。





“弦、張れるようになったんだ”





“軽音部、行ったよ”






“冬ちゃんね、すごく練習したんだよ”






俺は……っ!!






 

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設定タグ:ギヴン , 夢小説 , BL   
作品ジャンル:アニメ
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- 最近ギヴンにハマった20代ですが、こちらの小説ほんっっっとうに最高です!!!!夢主の行動・気持ち・考えなど文からとても伝わってきて読みやすいです。お忙しいと思いますが、完結に向けて頑張ってください。楽しみにしております!! (2020年4月30日 13時) (レス) id: e8737ae1a9 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - アニメ終わって落ち込んでたら、映画っ!嬉しすぎて……2020年まで頑張っていけそうです!言ノ葉さん最終話までお疲れ様でした!番外?リクエストも更新、楽しみにしてます!に (2019年9月20日 15時) (レス) id: 7ef2d991dc (このIDを非表示/違反報告)
蓮華 - はじめまして!梶さんと春樹とのお話を書いてほしいです! (2019年9月20日 10時) (レス) id: eb587ffa62 (このIDを非表示/違反報告)
神夜(プロフ) - マシュマロが通信制限で使用出来ないのでボードの方に感想、リクエスト書かせて頂きました。御手数ですが見て頂けると嬉しいですよろしくお願いします。 (2019年9月18日 5時) (レス) id: 1c640baa7c (このIDを非表示/違反報告)
言ノ葉(プロフ) - 美咲さん» コメントありがとうございます!雨月さんめっちゃ美人ですよね……。10話の耳かけスタイルがとても色気爆誕でやばかったです…… (2019年9月16日 21時) (レス) id: 50b948882d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:言ノ葉 | 作成日時:2019年8月30日 15時

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