Gate ページ6
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日が落ちて、辺りも暗くなった頃にさて帰るかと腰を上げる。今日も結構描いたな。もうじきスケブのページもなくなるし、帰りに買っていこう。いつもの文房具屋さん、まだ開いてるかな。
「うーん…」
部室へ戻るまでの道で、今日描いたものを見返す。思わず苦笑しちゃったよね。相変わらずきったないし、途中から描いてる人同じだし。コイツは何をしにこの部活を影から見ているんだ。
昇降口に靴を脱ぎ捨てて、そのまま階段を上っていく。3階の奥突き当りが部室だ。部員も友達も帰っちゃったから電気は消されていて暗い。ま、慣れたもんです。
部室の鍵を開けて中に入る。入ったとたんに油絵具の匂いが鼻を掠める。嫌いじゃない。
荷物を取ってから、とりあえず一通り点検。大丈夫そうね。
こういう生活にも慣れつつある。悪い気はしないし、私のためだけに待たせたりするのは申し訳ないしね。でも少し寂しいというか。
まぁ今に始まった話じゃないから、本当、どうでもいいっていうか、慣れたっていうかさ。要は戯言。
「…」
脱ぎ捨ててった靴を履いて外に出た。みんなぞろぞろと帰っていく。
いろんな会話が聞こえてくる。課題が終わっていないだの、明日の授業忘れただの、月末のテストがやばいだの、すごく普通の会話。でもそれが、なんだかとても心に刺さった。
一人は寂しいものなのだと、気付くのにはそう時間はかからない。
「…」
こういうとき、寮で生活しているあの人たちはどうしてるんだろう。ていうか、親と離れて生活するって寂しくないのかな。かくいう私も今親と一緒にいないけどさ。
うん、寂しくないな。思いだせばそんなに寂しくないや。ははっ。
「ごめんちょっと待って」
「?!」
あれこれ思いだしながら正門を出ようとしたら、急に腕を引かれた。な、なんだよ誰だ?!
振り返ると…
「君確か…」
「そう、御幸一也。お前と同じクラスの」
「な、なんで君こんなところに…」
さっきまで野球グラウンドにいたんじゃ…ていうか何故練習着のまま…?
「あのさ」
「は、はい」
「ちょっと来てくれない?」
「え」
「頼むよ」
「ちょっ、え、何」
半ば引きずられるようにして連れて行かれる。おいおい待ってくださいよ御幸一也くん。
すごい視線が突き刺さるんだけど。多分この絵ヅラのせいだろうけどさ、でもさ、何より君のその顔のせいだと思うんだけどさ!
「何あれ」
「ウケる」
笑われてんじゃねえか!!おいこら御幸一也!!
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綾音 - 戻ってこられてよかったです!私からぬいぐるみを取ったら…から見てました!新作も御幸くんで嬉しいです!頑張ってください! (2017年9月15日 21時) (レス) id: 4b92f9c76f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Ray | 作成日時:2017年9月13日 23時