Reboot 【ダイヤのA】 (ページ3)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:3,581 hit

Anocent ページ3

---

―2年・春

進級できたのはいいけど、相変わらず部活以外で友達ができない私は、ぼんやりと窓の外の世界を眺めていた。春にしては珍しく晴れて穏やかな日だ。空の青に桜の薄桃が映える。

「ねぇA」
「うん？どうした」
「新歓のこと決めてないからさ」
「あー、そんなのもあったね」
「どうする？美部あんま来ないしね」
「去年先輩たちどんなのやってたっけ」
「えー？記憶にないなぁ…」
「先輩の誰かが新歓の様子ビデオ撮ってたりしないかな」
「ナイスA、それだ。放課後聞こう」
「うん」

幸いなことに、部活で同じ子二人くらいとクラスが一緒になった。おかげでぼっちは回避。

「お前またスコアブック読んでるのかよ」
「まぁ」
「何が面白いんだ」
「別に何が面白いってわけじゃないんだけど」
「じゃあなんで読んでるんだよ」
「なんとなく？」
「面白くねえなお前」
「そりゃどうも」
「褒めてねえ」

少し離れたところから聞こえてきた会話。

ずっとスコアブックとやらを読み続けている男子と、それを邪魔するかのように話しかける男子。二人とも仲いいんだよなぁ。多分だけど。

「どしたんA」
「や、別になんでも」
「御幸くん見てたのー？」
「別にそういうわけじゃ…」

その御幸とやらが、何を隠そう、私が今でも野球グラウンドでひたすら眺め続けている相手だ。最悪なんだか最高なんだか。…違うよ、恋愛的な意味じゃないからね。

そりゃあ何度か話してみたいなあとは思ったことはあるけどさ、何せ彼、カッコよくてモテるからね。うかつに近寄れないというかさ。

だから！違うんだって！私みたいないかにも陰キャみたいな女が近寄れるわけないでしょってことなんだって！伝われ！

「はぁ…」
「なんか今日のA面白いね」
「なんで笑うんだよ。何が面白いんだ」
「なんか面白い。イヤ会ってからずっと面白い子だと思ってたけど」
「嬉しいような嬉しくないような…」

とかなんとか話しているときだ。

「御幸、お呼びだぜ」
「は？何よ」
「あっこ」

クラスの男子が御幸にそう言って、教室のドアを指さした。なるほど。

「絶えませんなあ」
「何その言い方」
「ごめんつい」
「まぁ、うん、言いたいことは分かる。御幸くん人気だよね」
「嫌味とかでなくとても尊敬する」

すごいよなぁ、老若男女誰にでも好かれるって。カリスマっていうの？うん、分からない。

「御幸一也かあ」

またの名を天才捕手、ね。