はむ・ハム・チェリー 3

102 K side 距離をツナグ会話 ページ33

『おはよ。今 おきた。』

『まだ寝てるかな』

『朝ごはん 何食べたの』

『今 リハ休憩中。差し入れのケーキ旨いわ』

『こっちは順調。お昼 食べた？』





空港に降りた途端 肌にまとわりつくよな
アジアの熱。

日本の暑さとは また違う熱気を感じつつも
《海外》の実感を味わうヒマもなく過ごした
移動日。


･･･ から、一夜明けて。

俺のスマホは しょっちゅうブルブル震えてた。
おはようの確認から始まって
今朝の天気はどうだ とか、
朝メシに トースト焼いて食った たら、
差し入れの駄菓子が 箱盛りだった たら、
どーでもイイよな報告ばっかが 送られてきた
アイツとの トーク画面。

コッチの舞台に関する 進行具合や
アッチのリハについての 詳細なんかを
一切 送ってこねーのは、
アイツなりの 気遣いなんだと思えば
そんだけで 張り詰めてた神経も
何だか じんわりと弛んでくるってもんだ。



『既読になれば それで安心だから』
ていう 言葉に甘えて
ほぼ アイツの《呟き》状態んなったトークに
俺が返すのは ホテルのベッドに 入ってから。

『ホテル 豪華だわ。部屋も広い。』

『メシもウマい。日本から 米 持参だぜ？』

『部屋からの夜景 キレイだわー。』


俺の返しに すぐ付く 既読。

1時間先の 時を過ごしてる 日本で
夜遅くに ベッドから送る 俺のトークが
リアルタイムで 開かれるってのが
嬉しくて、照れ臭くて･･･

最高に 安心すんだわ。





1日、2日･･･

離れた時間が 増えるにつれて

『ちゃんと ご飯食べてる？』

『頭痛くなったら 早目に薬飲みなよ。』

『熱出たら 田所さんには 言っときな。』


俺の体調を 心配する言葉が 増えて。
ま、俺が正直に 自分の体調をアイツに伝えるなんて 思っちゃいねーんだろうけど？

そんでも 遠く離れた場所から届く想いに

『今日も 楽屋で満腹 食ったし。』

『薬飲んだ。ぜんぜん元気。』


倒れ込むよにダイブした ベッドの上から
即 既読になるトークを 送り続けた。





そして 無事に千穐楽を終えた 楽屋。

余韻に浸る余裕もなく
慌しく 着替えて 帰国の荷物をまとめて。
晩メシも 食わずに 劇場を離れる。


『終わったー。これから空港 行く。』


明日の朝には 日本に着いてるっていう
深夜発の便に乗るタメに 急ぐ車の中。


送ったと思ったら スグに既読になり
返ってくる文字。





『お疲れ様。待ってる。』




俺は ある種の不安を 打ち消すよに
そのメッセを グッと握り締めた。

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