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3話 ページ7

豪雨の中、しゃっくりを繰り返すように泣く私を彼が抱きしめる。とく、とく、と彼の心音がやさしくそばで響いて、まるで昼下がりのお昼寝の時間に、先生にとんとん撫でられているときのような感覚だった。

 疲れもあってからだがだるく、すぐにうとうとまどろんだ。

「まだ眠らないで。寒いだろう」

 彼は私に優しくそう言う。彼に抱かれたまま私も立ち上がり、体は震えて寒いはずなのにどこか幸福に犯 されたような、温度感覚を失ったようすでふらふら歩いた。

 その場所に着いたとき、彼は私にシャワーに入ってくるよう言った。私は雨と川の冷たさにぶるぶる凍えていた。

 シャワー室の前までは彼に支えてもらいながらたどり着き、一人になって濡れたスーツを剥ぐように脱いだ。

 部屋に入ると流れるシャワーただに当たりながらうつむく。私の足は真っ赤になっていて、シャワーを当ててみてもこそばゆいばっかりだった。

 しばらくそうしていてだんだん身体が温まってくると、それと同時に眠気も覚めてきて脳が現実味を帯びだす。そういえば、ここはどこだろう。太宰さんの家だろうか。シャワー室を出るとすぐにトイレや洗面台が見えるので、ビジネスホテルの類だと予測する。

 そばにそっと置かれてあった寝間着を取って私はそれに腕を通した。そしてタオルを肩にかけたまま、部屋を出で、その奥にいる太宰さんにほほえんだ。

「顔色は、だいぶよくなったようだね」

「はい」

 言うと彼はおいで、と手招きして髪をかわかしてあげる、と笑った。

「きみ、体を悪くしているんじゃあない?まったく眠っていないでしょう」

「......どうしてわかるんですか?」

「古い友人がいてね、その人が遠くに行く前と、きみからはおんなじ匂いがするんだ」

 ぶろろろと響くドライヤーの奥の、彼の声を聞く。やけにやさしい気持ちになって私は言った。

「生きているのが、悲しくてしょうがないんです。もう悲しくてしょうがないんです」

「自分の幸福も光栄も、生きているうちには決して無いとわかった時、ひとは、どんな気持ちになるものかね」

 彼は言った。そうしていつか髪をかわかし終えてドライヤーの手をやめ、その髪をなでながら、頬に優しくキスをした。

 そのまま彼は、目を瞑りながら私を抱いて、

「私、いま幸福だよ。私のいまの幸福は飽和点だよ」

 ふふ、と笑った。

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うずのしゅげ(プロフ) - 猫さん» ありがとうございます笑笑 そうですね、本当に彼女には報われてほしいですね☺️☺️ ドスくんが楽器を弾いて、夢主ちゃんが歌ってとかっていう穏やかで幸せな日々がありそうで妄想の翼が広がりますね!!笑 (7月17日 10時) (レス) id: c82952eeb4 (このIDを非表示/違反報告)
- ズビッズビッっべ、別に泣いてないですけど、夢主ちゃんは幸せであって欲しいですねズビッ (7月8日 10時) (レス) @page24 id: a46c77cf46 (このIDを非表示/違反報告)
吹原思木(プロフ) - ラいむさん» ラいむ様!!長い間、本当にお世話になりましたー−!!!こちらこそ、今までありがとうございました。受験勉強がんばってきます!何度も何度もしつこいようですが、本当に、ありがとうございました! (2022年10月23日 21時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)
吹原思木(プロフ) - 眠夢@低(無)浮上さん» わー−!!うれしいですー!そうですねー、もうこの作品を書くことがないんだと思うと、本当に私も寂しい気持ちです、、わざわざコメントありがとうございました!次作でもよろしくおねがいしますー−! (2022年10月23日 21時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)
吹原思木(プロフ) - 黒猫さん» 上から読み返してくださったんですか......!! いやもうまじで、うれしいです!!黒猫様にはお世話になりました、今まで本当に、ありがとうございました!!受験勉強も、がんばってきます! (2022年10月23日 21時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うずのしゅげ | 作者ホームページ:https://twitter.com/8YgT1yhKwYPDEd7  
作成日時:2022年8月11日 22時

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