5人の怪盗と生きる宝石第2幕 (ページ30)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:23,701 hit

mission66 ページ30

凛月side

数刻前

(相変わらず悪趣味だねぇ、この城は。)

俺の目の前に聳え立つ白銀の建物

それはこの国の象徴であり、皇帝である天祥院英智陛下が住まう城。

その為か国の名産であるセレナイト色の城壁、キラキラ輝く宝石が敷き詰められた中にある建造物は眩い輝きを放っている。

…要するに、俺は場違いも甚だしい。

神崎｢む、貴殿が陛下の客人であるな。我は"紅月"の神崎颯馬である。陛下から"客人が来たら通せ"と命を授かっているので陛下の御前まで案内致そう。｣

俺を陛下の元に案内してくれるらしい青年はこの国が誇る戦闘小隊"紅月"の1人だ。

なんでも、紅月のメンバーは3人しかいないのにも関わらず、大きな盗賊団をたった半日で壊滅させられるほどの腕前を持つんだとか。

普通、客人の案内に戦闘員を使わないと思うけど…まあ、俺は皇帝に警戒されているんだろう。

暫く、城の中を歩いていると見覚えのある大きな扉の前に着いた。…この先には皇帝がいる"皇帝の間"がある。

神崎…とかいう青年は眼鏡の男…紅月の蓮巳敬人にこの場を引き継いでどこかへ行ってしまった。

蓮巳｢"朔間凛月"か。陛下が話があるようだ。くれぐれも無礼の無いように。｣

凛月｢…朔間とかいう名前、二度と聞きたくないんだけど。虫唾が走る。｣

蓮巳｢ふん。この場ではその幼児のような言い訳は通用せん。お前はどこまで行っても"朔間凛月"だ。場を弁えることだな。｣

(なんなのこいつ｡)

決して小さくは無い苛立ちを覚えながらもこんな所で喧嘩する訳に行かないと自分を押さえ込み、皇帝の間へと足を進める。

ｷﾞｷﾞｯ…

やけに重い扉を開けた先にいたのは、自身の好物である紅茶を啜りながらクッキーを摘んでいる皇帝陛下だった。

蓮巳｢陛下｡例の客人をお連れ致しました｡｣

天祥院｢うん､ありがとう敬人｡下がっていいよ｡｣

陛下がそう言うと､音も立てずに部屋から出ていく眼鏡…あれ､名前なんだっけ､敬…敬介じゃなくて…まあいいや､敬ちゃんで。
敬ちゃんは少しだけ俺の事を睨んで出ていってしまった。

俺はその視線に気付かないふりをして皇帝陛下の前にある椅子に座り､テーブルにある陛下が口にしているクッキーを摘んだ｡

天祥院｢…はぁ､君はこんな所に来ても相変わらず図太いね…凛月くん｡｣

凛月｢うん､だって俺､別にあんたに敬意なんてないからね…エッちゃん｡｣

やっぱり俺はこの場所に相応しくないみたいだ。