第3話 士郎と彼女 1 ページ6
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その日の帰り道。3人並んで家路につく中、やけにアツヤは上機嫌だった。
「やっぱ、オレと兄貴と千鳥の戦略さえあれば勝てるよなあ。今度どっかと3人だけで試合してみるか？」
絶対勝てるって、とアツヤは無邪気な笑みを浮かべる。そんなアツヤとは対照的に、千鳥は頬をぷくっと膨らませた。
「どうして、ちゃんとみんなに事前に説明しなかったの？アツヤくんの今日のプレーのこと…」
普段より少し小さな声で千鳥は問い詰める。彼女が喉を痛めて大きな声を出せないから、戦略の説明はアツヤに任せたというのに。しかし、千鳥の声に迫力などなく、アツヤは悪びれる様子は皆無だった。
「別にいいだろ。わざわざアイツらに伝えるのも面倒だしさ。現に試合には勝てたわけだしな。」
「でも、本戦じゃこうはいかないよ。」
「大丈夫だって。オレと兄貴がいれば。千鳥は心配性だな。」
アツヤはあっけらかんと笑って千鳥の注意を全く聞き入れない。千鳥は小さくはあ、と溜息をつくと(これ以上わたしが何を言ってもアツヤくんの意思は変わりそうにない。風邪を引いたわたしが悪かった…)と肩を落とした。
そんな千鳥の肩をに士郎はぽんと手を乗せ「まあまあ」と優しく声をかける。
「今日は千鳥の風邪が早く良くなるように、母さんがシチューを作ってくれるって。」
士郎の言葉に千鳥は「本当！？」とパッと顔を輝かせる。
「士郎くんちのシチュー大好きなんだ、どうしてあんなに美味しいんだろう…。やっぱりソースの違いかな。」
途端に声を弾ませた千鳥に、士郎はくすくすと笑みを漏らす。その笑い声に、はしゃいでしまった自分に気付いた千鳥は慌ててすまし顔を作った。けれど、その頬と耳はうっすら赤くなっている。
「千鳥、兄貴に料理のこと聞いたってダメだぜ。」
「ちょっとアツヤ、それどういう意味？」
「そのまんまだよ。兄貴が料理すると暗黒物質錬成するじゃねえか。」
アツヤが冷や汗を流しながら、半目でそう口にする。数ヶ月前に士郎に作ってもらったオムライスの味を思い出しては、今でも腹が痛み出す。もっとも、あれをオムライスと呼べるなら、だが。
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作者名：いわき | 作成日時：2019年10月18日 0時
