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9バク ページ9

しかし、いつもならすぐに来たであろう衝撃がいつまでたっても来ない。
あの脳天が激しく揺さぶられるような、骨がたてる嫌な音が、額を頬を伝う生暖かい赤い体液の感触が、いつまでたっても来ないのだ。


おかしいと思ったカラ松は、恐る恐る固く閉じていた目を開く。
すると、目の前には自分が想像していたのとはどれも当てはまらない景色が広がっていた。


「な、どこだ? ここ」


いつの間にか地面に倒れていたカラ松は自由になっている手足で立ち上がり、辺りを見渡す。
辺りには綺麗な花々が広がるだけで、人っ子一人いないことが一目瞭然だった。


桜色の空には無数のシャボン玉が飛んでおり、カラ松はなんとなくここが現実世界でない事を悟った。


しかし、悟ったからといってここがどこかもわからず頼れそうな人もおらず、カラ松はその場に呆然と立ちすくむことしか出来なかった。
そんなカラ松の周りで、一匹の蝶がひらひらと舞い始める。


現実世界で見たこともない淡く青っぽい光を放つその蝶に、カラ松は目を奪われた。


「なんて、ビューティフルなバタフライなんだ」


カラ松はそう心からの言葉を口にすると、言葉が通じたのか蝶は嬉しそうに舞い飛びカラ松の傍を離れようとしない。
そんな蝶としばらく戯れていると、蝶はスッとカラ松の傍を離れた。


しかし、遠くへ飛び去るのではなく数メートルほど離れた場所でホバリングしている。
そんな蝶にカラ松は、まるで自分について来いと言われているように感じそのまま蝶の方へと歩み寄った。


カラ松が感じたことは正解だったようで、蝶はカラ松が近づくと離れまたホバリングするのだった。
蝶の道案内で、彼は花畑の間を進んでいく。


しばらく歩いていると、彼の視界に大きな湖が目に入る。
その湖は余程清いのだろう、まるで鏡のように空のシャボン玉を映していた。


そんな湖に目をやりながらも、カラ松は足を止めず蝶の後を追う。


「あ」


蝶の後を追っていたカラ松は湖のほとりで椅子に腰かけている人影を見つけた。
すぐさまその人影に向かって駆け寄り、近づいたところでその人影に向かって声をかけた。


「あ、あの……」

「やぁ、待っていたぞ。客人よ」


話しかけられた人影は腰かけていた椅子から立ち上がり、まるで舞台で演じる人のようにクルリと華麗にターンをする。
頭にのせられている帽子に手をかけ、持ち手がしを逆にしたようなステッキてカンッと地面を鳴らした。

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長月シキカ(プロフ) - 永久さん» はじめまして、作者の長月シキカです。コメントありがとうございます! 物語の最後の終わり方は中々に難産でしたので、永久様にそう言っていただけて本当に嬉しいです^ - ^ こちらこそ、最後まで閲覧してくださってありがとうございました♪ (7月28日 23時) (レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - はじめまして! 永久です!今回この作品を読まして頂きました。とてもストーリーが出来ていて夢主さんのキャラもすっごく良かったです!最後の終わり方もとても心打たれるものでした!最高の作品を作ってくれてありがとうございます! (7月28日 21時) (レス) @page49 id: 41fe1dd09b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長月シキカ | 作成日時:2018年6月25日 23時

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