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44バク ページ44

そんなカラ松に、アオはステッキを振ることで出現させたいつもの紅茶を差し出した。
掠れた声の出る喉を擦りながらカップを受け取ったカラ松は、温かいその紅茶で喉を潤す。


「ありがとう……アオ」

「どういたしまして……さて」


ふにゃりと笑うカラ松に笑みを返したアオは、椅子におろしていた腰をあげカラ松を見据える。
そんなアオの様子に、カラ松は首を傾げた。


「汝に問おう、汝の人間の時の名を答えよ」

「な、名前? 俺は、松野カラ松」

「よし。……汝に問おう、汝の両親の名は?」

「……松野松造と松野松代だ」

「うむ。……汝に問おう、汝の"兄弟"の名は?」


カラ松は戸惑いながらも次々とアオの質問に答えていくが、アオのこの質問にキョトンとした顔で言葉を返す。


「兄弟? 俺は"一人っ子"だから、兄弟なんていないぞ」

「……そうか」


カラ松のその言葉にアオは少しだけ眉を下げる。
アオはカラ松が眠りにつく時、契約通りカラ松の一番大切にしているものを貰い受けていた。


カラ松が一番大切にしていたもの。
それは、"兄弟に対する思いや記憶"だった。


兄弟との記憶を全て失くしたカラ松には、自分は一人っ子だと思い込んでいる。
そんな彼に何とも言えない表情を浮かべるアオに、カラ松が心配そうに見上げた。


「どうしたんだ? アオ……さっきから変な事聞いたりして」

「……いや、何でもない。それより具合はどうだ?」

「うーん、特に人間の頃と変わらないような……」

「そうか。まぁじきに変化が目に見えるだろう」


アオがそう言うと、カラ松はそうかと納得した。
それからアオは、目の前の彼の体調を考えながら獏としての生き方など、これからの事を伝える。
カラ松はうんうんと相槌を打ちながらアオの話に聞き入った。


あらかた話終えた時、アオは十四松との約束を思い出した。
兄弟の事を忘れている彼にとって、言ってもなんの事か分からないだろうが、約束は約束だとアオは思い、口を開く。


「カラ松、お前にある者から伝言がある」

「伝言?」


そうコテンと首を傾げるカラ松に、アオは十四松の言葉をそっくりそのままカラ松に伝えた。
伝え終わると、カラ松の目からほろほろと大粒の涙が落ち始める。


そんな彼にどうしたと聞くと、彼は何故だか分からないが嬉しいんだと、泣きながら笑った。
アオはそうかと言い、泣き続けるカラ松を抱きしめるのだった。

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長月シキカ(プロフ) - 永久さん» はじめまして、作者の長月シキカです。コメントありがとうございます! 物語の最後の終わり方は中々に難産でしたので、永久様にそう言っていただけて本当に嬉しいです^ - ^ こちらこそ、最後まで閲覧してくださってありがとうございました♪ (7月28日 23時) (レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - はじめまして! 永久です!今回この作品を読まして頂きました。とてもストーリーが出来ていて夢主さんのキャラもすっごく良かったです!最後の終わり方もとても心打たれるものでした!最高の作品を作ってくれてありがとうございます! (7月28日 21時) (レス) @page49 id: 41fe1dd09b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長月シキカ | 作成日時:2018年6月25日 23時

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