39バク ページ39
あの家に一分も一秒もいたくなく飛び出してきたカラ松は、あてもなく赤塚の町をぶらついていた。
賭けには勝つことが出来たが、アオに会えるのは夢の中だけである。
適当な場所で眠り、夢世界へと向かおうかと思い始めるカラ松の頭の中に聞き覚えのある声が響く。
自分の名を呼ぶその声の正体がアオだと分かったカラ松は、その声に誘われるまま薄暗い路地裏に足を踏み入れた。
入ったのは奥が行き止まりになっている閉鎖的な場所で、そんな路地裏の壁にアオはもたれかかっている。
「アオっ!」
「……カラ松」
「賭けは俺の勝ちだなっ」
どうしてここにいるのかなど色々言いたい事はあったが、カラ松はそれらよりも先に駆けの事が口をついて出た。
興奮気味にそういうカラ松に、アオは少しばかり悲しげな表情を浮かべながら「そうだな」と小さく笑みを見せる。
「賭けは我の負けだ、潔くそれを認めよう」
「じゃあっ!」
「あぁ……約束通りお前を我らの仲間として迎えようぞ」
アオがそう伝えると、カラ松は文字通り飛び上がって喜んだ。
普通、人から人外になろうとしている人間はこんな風に喜んだりしない。
カラ松の心は完全に壊れてしまい"人間"としての自分を捨てようとしているのだ。
彼のその心を壊したのは、間違いなくあの兄弟たちなのだ。
「まぁ、詳しい話しは夢世界で行うとしよう。我はあまり長く現実世界で実体をたもつことが出来んからな」
「なにっ!? それは大変だっ、早く戻ろう!」
"行こう"ではなく"戻ろう"とごく自然にそう言ったカラ松に、アオは既にカラ松の居場所は現実世界ではなく夢世界に変わってしまったのだと悟り、悲し気に眉をひそめる。
「どうした? アオ」
「……いや、何でもない。さぁこの扉から入るがいい」
軽くステッキを振り出現させた扉がギィッと音を立てて開く。
その扉の向こうには、カラ松がいつも夢で赴いていたあの美しい情景が広がっていた。
カラ松がその扉に入るのを見届け最後にアオが扉を通ると、ひとりでに動き扉が閉まる。
それから少しして、誰もいなくなった路地裏に色とりどりの男たちが慌てた様子で"誰かを"探していたことなど、夢世界に行ってしまったカラ松が知るよしもなかった。
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長月シキカ(プロフ) - 永久さん» はじめまして、作者の長月シキカです。コメントありがとうございます！ 物語の最後の終わり方は中々に難産でしたので、永久様にそう言っていただけて本当に嬉しいです^ - ^ こちらこそ、最後まで閲覧してくださってありがとうございました♪ (7月28日 23時) (
レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - はじめまして！ 永久です！今回この作品を読まして頂きました。とてもストーリーが出来ていて夢主さんのキャラもすっごく良かったです！最後の終わり方もとても心打たれるものでした！最高の作品を作ってくれてありがとうございます！ (7月28日 21時) (レス) @page49 id: 41fe1dd09b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2018年6月25日 23時
