38バク ページ38
また"裏切られた"。
そう思うとカラ松は今まで思い出すことのなかった、カラ松事変の事やアオの事、そしてアオとの賭けの内容を思い出した。
「フフッ……クククッ……」
「? なに気色わるく笑ってんだクソ松」
「感謝するぞ、ブラザー……」
「はぁ?」
「やっと、このクソみたいな世界からおさらばできるっ!!」
満面な笑顔でそう言うカラ松の言葉に、一松は賭けの事を思い出しサァっと顔を青くさせる。
呆然とする一松から服を奪いさっさと着替え部屋を出ようとするカラ松に、正気を取り戻した一松は今まさに出ていこうとする兄の足に縋りついた。
「ご、ごめっ! カラ松兄さんっ! 謝るから、行かないでっ」
「離せ、邪魔だ」
カラ松は冷たい目で一松を一瞥すると、バッと足を振り一松の縋る手を振り払った。
軽くなった足取りで階段を降りるカラ松に、二やついたおそ松と怒りの表情を浮かべるチョロ松とトド松が立ちふさがる。
三人はそれぞれカラ松に好き勝手言うが、カラ松は興味のない目をしながら口を開いた。
「どけ……俺の幸せの邪魔をするな」
「なっ!? まさかカラ松……っ!」
「そのまさかだ。お前達が裏切ってくれたおかげで、俺はようやくアオと一緒にいる事が出来る」
心底嬉しそうな顔をするカラ松に、三人は事の重大さを知る。
自分達は、賭けに負けたのだと。
大きなショックを受けた三人の横を通り過ぎるカラ松の前に、十四松が立ちふさがる。
遅れて正気を取り戻したおそ松らが、十四松にカラ松を引き止めるように叫んだ。
「……お前も、俺の幸せを邪魔をするのか?」
「……ううん。僕たちにカラ松にーさんの幸せを邪魔する権利は無いよ。幸せになってね、カラ松にーさん」
「! ありがとう十四松、じゃあな」
カラ松は十四松の頭に軽く手を乗せ、その横を通り過ぎる。
そんな彼の後姿を涙を流しながら、十四松は見送った。
「ごめんね。お姉さん、カラ松にーさん」
十四松がポツリと呟いた言葉は狭い廊下に静かに消えていくのだった。
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長月シキカ(プロフ) - 永久さん» はじめまして、作者の長月シキカです。コメントありがとうございます! 物語の最後の終わり方は中々に難産でしたので、永久様にそう言っていただけて本当に嬉しいです^ - ^ こちらこそ、最後まで閲覧してくださってありがとうございました♪ (7月28日 23時) (レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - はじめまして! 永久です!今回この作品を読まして頂きました。とてもストーリーが出来ていて夢主さんのキャラもすっごく良かったです!最後の終わり方もとても心打たれるものでした!最高の作品を作ってくれてありがとうございます! (7月28日 21時) (レス) @page49 id: 41fe1dd09b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2018年6月25日 23時