29バク ページ29
「という事があったんだ」
十四松と離れたカラ松は眠りにつき、夢世界でアオに今日起こった事を話した。
紅茶を啜りながら最後まで話しを聞いていたアオは、ふむと声をあげる。
そのもれた声からは確かに怒りの感情が含まれている。
「その一松、だったか? 酷いの一言では語りつくせん人間だな。そやつにはカラ松が怪我しているのが見えとらんのか。それより、怪我の方は大丈夫なのか?」
「あぁ、特に痛みもないから多分大丈夫だ」
「それなら良かった」
心底ほっとしたような声色でそう言うアオに、カラ松はふにゃりと笑って見せる。
カラ松はまるで自分の事のように怒ってくれるアオに、感謝の念が湧いた。
「ありがとうな、アオ」
「……気にするな、我はカラ松と同じ事をしただけだ」
優雅にティーカップを傾けながらそう言うアオのその優しさに、カラ松の傷ついていた心が癒されていく。
この幸せで穏やかな時間が続けばいいのに。
カラ松のその小さな願いは叶うことなく、今宵も無慈悲に現実世界へと戻されるのだった。
******
それから数か月がたった。
カラ松の怪我はすっかり完治し病院通いもしなくてよくなった。
しかし、怪我が治るのと比例してカラ松の兄弟たちを思う気持ちが薄れていくのをアオは感じていた。
前までは、カラ松が話すことのほとんどは兄弟たちのことだったのだが、今ではカラ松の会話に兄弟の話が入るのがほとんどなくなっているのだ。
現実世界の兄弟たちもアオと同じことを感じていた。
怪我が治ってもカラ松は、何かと理由をつけて客間で睡眠をとるようになり。
兄弟たちからの誘いを滅多に断ることのなかったカラ松が、その誘いをことごとく断るようになった。
特に一松に対しての扱いがガラリと変わった。
いつもなら一松に胸ぐらを掴まれ睨まれただけで涙目になっていたカラ松が、そんな様子を一切見せる事はなく正論で一松を諭すようになった。
イタイ発言もイタイ服装もやめ、カラ松girlを探しに行くこともやめ、兄弟たちにも塩対応で接し必要最低限の会話しかしなくなったカラ松に、おそ松たちは困惑を隠しきれない。
彼らが特に一番気にかかったのは、彼が暇さえあれば深い眠りにつくようになった事だ。
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長月シキカ(プロフ) - 永久さん» はじめまして、作者の長月シキカです。コメントありがとうございます! 物語の最後の終わり方は中々に難産でしたので、永久様にそう言っていただけて本当に嬉しいです^ - ^ こちらこそ、最後まで閲覧してくださってありがとうございました♪ (7月28日 23時) (レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - はじめまして! 永久です!今回この作品を読まして頂きました。とてもストーリーが出来ていて夢主さんのキャラもすっごく良かったです!最後の終わり方もとても心打たれるものでした!最高の作品を作ってくれてありがとうございます! (7月28日 21時) (レス) @page49 id: 41fe1dd09b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2018年6月25日 23時